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2022.01.13

急激に感染拡大しているオミクロン株。その臨床的特徴は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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急激に感染者が増えているオミクロン株。このオミクロン株にはどのような特徴があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年12月30日ウェブ掲載された、今日本でも急増している、新型コロナのオミクロン株の臨床的傾向についての、南アフリカからの報告です。

(※これはレターなので、通常の論文より速報性の高いものですが、それでも手続きや検証を経ての発表なので、一般の報道と比べるとどうしても後手にまわる感じは否めません。内容もまっとうなものではあるのですが、やや今更感のあるのは仕方のないところです。)

▼石原先生のブログはこちら

オミクロン株の特長は?

オミクロン株(B1.1.529)は、2021年11月24日に南アフリカにおいて同定され、その第4波と呼ばれる流行は2021年11月中旬から始まって、12月に入ると新型コロナウイルス感染の95%は、オミクロン株によるものと推測されています。

今回の検証はそれ以前の1から3波の流行(3波の主体はデルタ株)と、第4波の流行(解析は2021年11月15日から12月7日)の違いを比較したものです。

第4波の調査期間における入院数は2351名で、そのうち救急病棟への入室は41.3%でした。これはそれまでの3つの流行時期には68から69%であったことと比較すると、明らかに重症の比率は低下しています。

ただ、救急病棟への入院の基準は流行の時期によっても違いがあるので、必ずしもオミクロン株で重症患者が少ないとはこの数字だけでは言い切れません。

オミクロン株は入院率も死亡率も低い

オミクロン株の流行期に入院した患者は、年齢は中央値で36歳と若く、女性の比率がそれ以前より高くなっていました。

基礎疾患のある患者の比率は、第3波までは50%を超えていましたが、オミクロン株の流行期では23.3%という低率になっていて、第3波のまでの時期には呼吸不全などの急性呼吸器症状を呈して入院する患者が、70から90%という高率で認められていましたが、オミクロン株の流行期にはこれも31.6%に留まっていました。

入院患者の死亡率は、デルタ株流行の第3波では29.1%という高率でしたが、これもオミクロン株流行期には2.7%に低下していました。

ワクチン接種と入院患者との関連をみると、オミクロン株流行期の入院患者のうち、ワクチン未接種者は全体の66.4%を占めていました。

デルタ株に比べて遙かに軽症かも

このように、オミクロン株の流行がその前のデルタ株の流行と比較して、遙かに軽症事例が多く基礎疾患のある事例も少ないことは間違いのない事実です。

ただ、それがオミクロン株自身の性質によるものなのか、ワクチン接種やこれまでの複数回の流行によって、対する人間の側の免疫の状態の変化によるものなのか、と言う点については現状はまだ結論が出ていない事項であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36