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2022.04.20

40歳以降の婦人科特有の疾患予防には、検診とセルフケアが重要!

ILACY

2022年1月29日に開催された「日本総合健診医学会 第50回大会」において、浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生が「腟内フローラから考える女性ヘルスケアのパラダイムシフト~子宮頸癌リスク低減の新たな展望を見据えて~」と題した講演を行いました。

腟内フローラ(腟内に棲む細菌の集団)と婦人科疾患の関係のほか、国内の子宮頸がん予防対策の現状と検診の重要性、さらには子宮頸がんをはじめとする婦人科疾患のリスク低減および症状改善に有効なデリケートゾーンのセルフケアについて、吉形医師のグループが2021年に実施した研究結果を発表しています。
ここではその講演より、更年期以降の女性が意識したい、婦人科疾患の予防に役立つ基礎知識を中心にご紹介しましょう。

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女性特有の疾患には、腟内フローラが大きく影響する

一生を通じて女性ホルモンの影響を受ける女性の体には、ライフステージの変化とともにさまざまな不調や疾患が現れます。人生の前半は月経に関わる問題など婦人科特有の病気が目立ちますが、中高年以降になると生活の質に影響を及ぼす疾患が多くを占めるようになります。

最近では、萎縮性腟炎や過活動膀胱など、GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群※)と呼ばれるデリケートゾーンのトラブルも注目されるようになりました。

※GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)...次の症状を表す概念。
・外陰部・腟の萎縮、それによる痛みなど性器症状
・尿もれや頻尿、尿道口の痛みなどの尿路症状
・性交痛や潤滑能力の低下などの性交関連症状

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腟内フローラが関係する疾患は世代によってさまざまで、各世代で多いものは次の通り。

■性成熟期に多い
・性感染症
・不妊症
・子宮頸がん

■更年期に多い
・子宮体がん
・卵巣がん

■更年期~高齢期に多い
・GSM

こうした疾患の発症は、下記の点からも腟内フローラと腟の働きが密接に関係していることがわかります。

女性ホルモンの分泌が十分な腟は、善玉菌のひとつ「ラクトバチルス」を中心とした乳酸菌が豊富に作られることによって自浄され、すこやかな状態に保たれることで女性の体を守っています。このとき、腟は細菌を死滅させるのに理想的な酸性の状態にあるので、雑菌や病原菌は繁殖しません。
さらには、がん細胞へと移行する可能性があるHPV感染や、婦人科系のがんのリスクからも女性の体を守ってくれることが、研究によって示されています。

このことから、腟内フローラを正常に保つことは、すべてのライフステージにおける女性の健康を考える上で、非常に重要だといえるでしょう。

乳酸菌含有の専用ケア用品で、腟内フローラの改善が見込める

腟内フローラの改善に取り組むことによる婦人科疾患のリスク軽減効果について、ラクトバチルス乳酸菌含有素材のケア用品で、デリケートゾーンケアを行った研究の結果を発表しました。
この研究では、ラクトバチルス乳酸菌含有のケア用品を使用する前後で、腟内フローラの状況や酸性度、過活動膀胱などの症状について、実施前後の比較調査をしています。以下、一部を抜粋してご紹介します。

【研究結果抜粋】
対象:健常女性69例(27~76歳)
研究期間:2021年5~6月末
観察期間:4週間
使用商品:
乳酸菌配合デリケートゾーン専用洗浄剤
乳酸菌配合デリケートゾーン専用クリーム
乳酸菌配合腟内ジェル

<デリケートゾーン専用品でのケアを開始する前>
・閉経前はにおい、かゆみ、おりものなど、閉経後は尿もれ、頻尿、性交痛に悩む人が多かった。
・腟内にラクトバチルスが存在する人は、閉経前は65%、閉経後はわずか5%であった。

<デリケートゾーン専用品を使って4週間ケアした後>
・閉経、未閉経を問わず、すべてのグループで病原菌が減少。特に、専用洗浄剤、専用クリームに加えて腟内ジェルまで使用した閉経後のグループでは、目立って減少した。腟内のラクトバチルス乳酸菌が増加する例も見られた。
・排尿トラブルを訴えていた人のうち、症状が重い人に多く改善が見られた。
・ケア開始前にデリケートゾーンに何かしらのトラブルがあるとしていた人の、多くが改善した。

これらのことから、乳酸菌を含有したデリケートゾーン専用品によるセルフケアは、デリケートゾーントラブルの改善だけでなく、腟炎や膀胱炎、子宮頸がんをはじめとする婦人科がんのリスク低減効果も期待されます。

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子宮頸がんは「がんになる前の状態」で見つけることが重要

子宮にできるがんには、若年世代から気を付けたい子宮頸がんと、更年期世代から注意が必要な子宮体がんがあり、自治体が行う一般的な「子宮がん検診」は、子宮頸がん検診を指しています。

子宮頸がんは、婦人科領域において乳がんに次いで発症頻度が高いがん。子宮頸がんの原因ウイルスであるHPVに感染しても、多くの場合は自身の免疫で排除できるため、子宮頸部の細胞ががん化することはごくわずかですが、感染が長期持続すると、がん細胞に変化することがわかっています。
そのリスクが高まる時期は、性交経験を介してHPVに感染しはじめる「若年層」と、潜在していたHPVが再燃する「更年期以降」の2つの時期となります。

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子宮頸がんは比較的生存率が高いがんですが、円錐手術などで子宮を残すことができても、術後、子宮口の癒着によって、月経痛がひどくなったり、妊娠中の流産リスクが増えたりするなどの影響があります。
また、進行がんでは、命が助かったとしても、子宮を全摘出するために子供が望めないほか、術後に後遺症を患うこともあり、治癒後の人生の選択や生活の質には深刻な影響を及ぼす可能性があります。

日本における子宮頸がん検診の受診率は、年に40%程度で横ばいとなっており、決して高くない状況が続いています。
検診にHPV検査を併用すると、子宮頸がんのリスクの有無を早期に知ることができ、前がん状態で発見する率が高まります。子宮頸がん検診ではHPV検査も活用するなど、がんになる前に発見することが重要です。

併せて、女性のQOL向上を考えた子宮頸がん検診としては、
・早期発見と精度の高い検査法
・女性の精神的負担
・身体的負担
・再検査に伴う経済的負担の軽減
が重要なポイントです。

そして、子宮頸部細胞診・HPV検査とともに検査方法や精度は向上してきています。現在では精度の高い検査法を積極的に取り入れている医療機関が増えつつあるので、ご自身の受けている検査がどのような方法で行われているのかを調べてみてもいいでしょう。

検診とセルフケアで、婦人科特有の疾患から自分を守ろう

今回の講演では、女性特有の疾患リスクの予防や生活の質の向上には、定期的な検診と適切なデリケートゾーンケアが有効であることが示されました。

信頼できる医療機関を見つけて欠かさず検診を受けるとともに、ラクトバチルス乳酸菌含有素材によるデリケートゾーン専用品でセルフケアを行うことで、腟内フローラを良好に保ちましょう。

この記事を監修した人

吉形 玲美(よしかた れみ)医師

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医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科
1997年東京女子医科大学医学部卒業
臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。

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