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2022.08.26

新型コロナ感染の味覚嗅覚障害の回復率【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生  

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新型コロナに感染すると味覚や嗅覚が鈍くなるという症状が多いようですが、どれくらいの頻度で発生し、回復にはどれくらいの日数がかかるものなのでしょうか。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2022年7月27日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の味覚嗅覚障害について、その回復率を検証したメタ解析の論文です。

▼石原先生のブログはこちら

コロナ感染と味覚聴覚障害の関係は?

味がしなくなる、匂いが分からない、というような味覚嗅覚障害は、通常の感冒においても認められることはありますが、新型コロナウイルス感染症において、非常に多く認められることが指摘されています。

ただ、その詳細についてはまだ明らかでない点が多く、オミクロン株の流行以降は、味覚嗅覚障害の発症頻度は減っているという報告もあり、確かに診療においてもそうした印象は持っていますが、実証された事項ではありません。

コロナ感染の味覚嗅覚障害について調査

今回の研究はこれまでの臨床データをまとめて解析した、メタ解析によるものですが、味覚嗅覚障害それぞれの頻度と、その回復に掛かる時間を検証しています。

18の臨床研究に含まれる3699名の患者情報を解析したところ、嗅覚障害は感染者の5.6%に、味覚障害は4.4%に認められました。
その30日後、60日後、90日後、180日後の回復率は、嗅覚障害が74%、86%、90%、96%で、味覚障害が79%、88%、90%、98%でした。

どのような患者が回復しづらいのかを見てみると、女性、障害の程度が重い場合、鼻閉を伴う場合に、回復しづらい傾向が認められました。

有効な治療法の開発を

このように、味覚嗅覚障害の多くは経過と共に回復しますが、半年経過後も回復が見られないケースもあり、今後その有効な治療法の開発を含めて、対応が急務であるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36