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2020.07.15

医療崩壊の引き金にも。今年の夏はマスク熱中症に要注意【マスク熱中症・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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例年並みか、それ以上の厳しい暑さが続くと予想される今年の夏。その上、新型コロナウイルスへの感染症の予防としてマスクの着用が求められており、例年以上に熱中症への危機感が高まっています。

なぜ、夏にマスクをつけるのが危険なのでしょうか。
熱中症予防を怠るとどんな事態が起こり得るのでしょうか?

済生会横浜市東部病院患者支援センター長、谷口英喜先生にマスク着用における熱中症のリスクと予防策について聞きました。

谷口 英喜(たにぐち・ひでき)先生

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済生会横浜市東部病院 患者支援センター長
専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、東京医療保健大学大学院客員教授。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。

マスク着用で熱中症シーズンを迎えるリスクは?

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夏の暑い日にマスクをつけて過ごし続けることは身体にとって大きな負担です。体内に熱がこもってしまい、熱中症へのリスクは格段に上がります。熱中症予防には、暑さが本格化する前に少しずつ身体を暑さに慣らしていく「暑熱順化」が大切になります。しかし、今年は4月上旬に新型コロナウイルスの感染拡大による「緊急事態宣言」が発令されたことで、外出自粛やテレワークが続き、『夏の身体』になる準備ができていない人が多い状況です。

四季があり、高温多湿な気候の日本は、もともと熱中症が多い国。新型コロナウイルス感染症対策で疲弊している医療機関に、例年通りの熱中症患者が緊急搬送され続けると、日本の医療機関の多くが機能しなくなるリスクがあります。私たちにとって、マスクをしながら迎える夏は初めてのことですから、今年は特に「熱中症予防」に力を入れなくてはいけません。

マスク着用で知らないうちに脱水になる危険

マスクで身体の熱がこもる

マスクの着用で熱中症のリスクが上がる理由の一つは、日常的にマスクをつけることで普段よりも体内に「熱がこもりやすい」状態になるため。マスクをしたまま炎天下にいると、内部の温度は40度にまで上がると言われています。マスクをすることで呼気も吸気も温められる上に皮膚表面からの放熱が抑えられてしまい、熱がこもるのです。呼吸の頻度や心拍数も上昇するので、身体に負担がかかります。

口渇の鈍化

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口から吐き出す息によって、マスク内の湿度は常に100%近い状態になります。常に喉が潤っているので、喉の渇きを感じにくくなります。
その結果、水分補給が遅れて、知らないうちに脱水が進み、熱中症になってしまうリスクが高まってしまうのです。今は、人前でマスクを取るという行為が難しいものになってしまっていますよね?
気軽に水分補給ができなかったり、マスクを外せなかったりする社会的な空気が、脱水を助長させているとも言えるでしょう。

外出自粛で熱中症のリスクが上がるわけ

筋肉量の低下で水を蓄えられない身体に

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筋肉は、身体に水分を蓄えるもっとも大きな臓器で、年齢と共に低下していきます。これは活動量などの低下によって、筋肉量が低下するためと言われています。そのため、年齢を重ねるごとに筋肉量を維持することが大事になるのです。
ですが、緊急事態宣言後の自粛期間で多くの方の運動量が大幅に減り、運動不足になりました。その結果、筋肉量が減って体内に水分を蓄える力が弱くなっている方が増えています。

暑熱順化が出来ていない

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例年であれば、身体は厳しい夏を迎えるための準備を4月〜6月頃に行います。徐々に上がる気温の中で、通勤や通学、スポーツなどの身体活動をすることで、身体は血管を拡張させて血流量を増やし、汗をかきやすくして体温を下げられる等の対処が出来るように準備をしていきます(暑熱順化)。しかし、今年はこの大切な期間を家で過ごしてしまった方が多いため、暑熱順化が出来てないまま夏を迎えようとしています。

それが顕著に表れているのが小学校の体育の授業です。例年よりも多くの子供達が、体育の授業中に熱中症で倒れて病院に搬送されているというような報道がなされ始めています。子供達がまだ、暑さに耐えられず悲鳴をあげているのです。このことを保護者や教育者は知っておかなくてはいけません。

最悪の場合は命に関わることも……

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熱中症の症状は程度により様々ですが、体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温調節が働かなくなり、体温上昇、めまい、痙攣、意識障害などの症状が起こります。また、重度の熱中症になってしまうと臓器不全など重篤な症状を引きおこし、最悪の場合死に至ることもある病気です。

そして、この病気の怖いところは進行が早いこと。1日で命に関わることもあり、早急な対処が必要です。

脱水は新型コロナウイルスへの感染のリスクをあげる

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ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入するのを防ぐ役割を担っているのが、気道にある粘膜や粘液。これらは、水分で潤っていることで初めて機能を発揮できます。水分補給が足りない状態だと、異物の侵入を防げなかったり、入ってしまった異物を痰として外へ運び出せなかったりということがおきるからです。また、脱水の状態だと、摂取した栄養素が細胞に届かず免疫機能も低下する可能性も。つまり、熱中症は新型コロナウイルスをはじめとする、あらゆるウイルスや細菌に感染するリスクを上げてしまうのです。

熱中症で医療崩壊の可能性も

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総務省消防庁によると、去年5月から9月までに熱中症で病院に搬送された人は全国で7万1317人。そのうち、およそ900人が死亡しています。(※1)熱中症は早急な対処が必要な病気。新型コロナウイルスへの対応でキャパシティを超えつつある医療機関に、例年通りの熱中症患者が搬送されたら、日本の医療機関の多くが機能しなくなるリスクがあるのです。

感染症対策をしながら熱中症対策 後編でさっそくチェック!

「新型コロナウイルスと熱中症の両方の対策をせざるをえない」という、誰も経験したことのない夏がやってきます。どんな影響が出るのか誰にもわからない今、私たちが出来ることは一人ひとりが熱中症に対して例年以上に注意をすること。次の記事ではその対策方法を詳しくお伝えします。

▼コロナ禍での熱中症対策はこちらの記事で!

参考文献

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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