メニュー

2021.02.26

新型コロナ感染時における全身のさまざまな痛みについて【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

新型コロナは肺炎症状のみならず、頭痛、腹痛、胸痛など、さまざまな痛みを発生することもあるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Journal of Pain Research誌に、2021年1月26日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症に伴って発生する痛みについての総説です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナの症状の一つにさまざまな「痛み」がある

新型コロナウイルスに感染すると、概ね2から14日の間に、発熱や咳などの症状で発症する、というのが一般的な経過です。

ある統計によると、初発症状としては発熱が98%、咳が76%、呼吸困難が55%、筋肉痛や全身倦怠感が44%、喀痰の排出が28%、頭痛8%、喀血5%、下痢3%となっています。

ただこれは、肺炎が主な症状として認識されていた流行が初期の段階のデータで、その後軽症事例も多いことが認識されるようになると、筋肉痛や関節痛が14.9%、咽頭痛が13.9%、頭痛が13.6%、というようなデータもあります。

これまでに新型コロナウイルス感染症の症状として、頭痛、咽頭痛、筋肉痛、関節痛、腹痛、胸痛が報告をされています。その一覧がこちら。

これまでの臨床データをまとめたものですが、新型コロナウイルス感染症に伴う各種の痛み発症率は、頭痛が1.7~33.9%、咽頭痛が0.7~47.1%、筋肉痛と関節痛が1.5~61.0%、胸部痛が1.6~17.7%、腹痛が1.9~14.5%となっています。

大きな幅があるのは、前述のように対象となる事例が、入院する肺炎事例なのか、軽症を含むRT-PCR陽性が確認された有症状全事例なのか、という点による違いであると思われます。

このように全身に痛みを生じることが多いのは、この感染症の比較的特徴である、というように思われます。

痛みが強いと予後が悪いことも多い

また痛みの強い事例は重症化しやすく、その予後も悪いことが多いと言う点でも報告はほぼ一致しています。

ただ、たとえば頭痛の原因が、神経系の炎症やウイルスの侵入によるものなのか、単純に炎症物質の増加によるものなのか、それとも別個のメカニズムが存在するのか、というような点については、現時点であまり明瞭ではないようです。

ちょっと興味深い報告としては、間欠的にしかRT-PCR検査が陽性にならないというような事例で、検査が陰性の時期に頭痛が強い、というものがありました。

論文においては新型コロナウイルス感染症の初期診断において、痛みの有無が役立つ症状になるという記載がありますが、実際には多くの他の感染症においても、全身症状としての痛みは一般的な症状であるので、あまりそうした役には立たないように思います。

あらゆる身体の痛みにも注意して

いずれにしても新型コロナウイルス感染症の患者さんを診る時には、肺炎などの呼吸器疾患と共に、痛みなどの別個の症状にも、留意しつつ診療に当たる必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36