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2021.06.24

肥満だとコロナ重症化リスクが高いってホント?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナに感染した場合、基礎疾患があると重症化するリスクが高いといいます。肥満や過体重の方も重症化リスクが上がるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Diabetes & Endocrinology誌に、2021年4月28日ウェブ掲載された、体格の指標であるBMIと、新型コロナウイルス感染症の予後との関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

肥満だと新型コロナは重症化するのか?

新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクとして、高血圧などと共に指摘されることが多いのが肥満です。

肥満では新型コロナウイルス感染症による、重症化のリスクが増加したとする報告が複数見られます。

ただ、その殆どは、BMIが30以上を肥満と定義して、そのあるなしで重症化のリスクを比較しているだけのデータです。

心血管疾患とBMIや死亡リスクとの関連は、概ね22から25くらいが最も低リスクで、それより低くても高くても共にリスクの増加が認められる、というような報告が多いのですが、新型コロナウイルスの重症化や生命予後についても、同様の傾向が認められるのでしょうか?

その点はまだ明確ではありません。

肥満とコロナ重症化の関係を検証

今回のデータはイギリスのプライマリケアのデータを活用して、20歳以上で新型コロナウイルス感染症に罹患した、6910695名という膨大なデータを解析して、体格の指標であるBMIと、新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡リスクとの関連を、比較検証しています。

その結果、BMIと新型コロナウイルス感染症による入院リスクと死亡リスクとの間には、BMIが23が最も低リスクで、それより低くても高くてもリスクは増加する、という関連が認められました。
その一方で新型コロナウイルス感染症により集中治療室に入室するリスクは、BMIが1増加するにつれ10%増加する、という直線的な関係が認められました。

このBMI上昇に伴う重症化と死亡リスクの増加は、年齢は40歳未満の若年層でより顕著で、人種では黒人種でより顕著という特徴が認められました。

BMI23以上だとリスクが高まるのは事実

このように、今回の大規模な疫学データの解析から、BMIが23を超える過体重と肥満は、新型コロナウイルス感染症の独立した重症化リスクであることはほぼ間違いがなく、それが何故重症化の条件により傾向が異なるのか、その重症化のメカニズムは何なのかなど、不明な点は多いのですが、今後のより突っ込んだ検証を待ちたいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36