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2021.06.07

40歳・50歳の付加健診を受ける必要はあるの?

kencom公式ライター:松本まや

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※協会けんぽの情報をもとに作成しています。各検査内容の詳細は、所属されている健康保険組合の案内をご確認ください。

40歳、50歳で補助が受けられ、一般の健康診断よりも項目を増やすことのできる付加健診。検査項目を見てもピンとこないものもありますが、一体どんなメリットがあるのでしょうか。kencom監修医師である石原藤樹先生に、詳しく解説いただきました。

付加健診とは何?

参考:協会けんぽHP

参考:協会けんぽHP

一般健診に加えてさらに検査項目を増やし、生活習慣病など年々リスクが高くなる病気の早期発見や、生活習慣の改善につなげるものです。全国健康保険協会加入者で、一般健診を受診する方のうち、当該年度において40歳及び50歳の方は補助を受けられます。

追加となる項目は、尿沈渣検査、血液学的検査の項目(血小板数、末梢血液像)や肝機能検査(総蛋白、アルブミン、総ビリルビン、アミラーゼ、LDH)の追加、腹部超音波検査(腹部エコー)、眼底検査、肺機能検査です。自覚症状の出づらい肝硬変や脂肪肝、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腎障害の早期発見に非常に役立ちます。

各検査は何を見ているのか?

腎障害の早期発見には尿沈渣検査

尿の中にある赤血球や白血球、上皮細胞の数値を数えることで、尿路に炎症がないかを調べる検査です。自覚症状の出づらい早期の腎障害や結石などの発見につなげることができます。

肝硬変の検査に血液学・生化学的検査

血小板の数値を見ることで、貧血や白血病、肝機能の状態を。総蛋白の数値は腎機能や肝機能の低下を。アルブミン、総ビリルビンの数値を検査することで肝炎や肝硬変の疑いがないかを調べることができます。

胃腸以外の腹部の異変は、腹部エコー

腹部エコー検査は、高周波の音波を身体に当て、臓器や組織で反射されてくる反射波を画像化して、肝臓や胆のう、腎臓といった腹部の臓器の状態を調べます。肝臓や腎臓のがんのほか、腎結石なども発見できます。袋状をしており、中が空洞になっている胃や腸といった管腔臓器は調べられないので、胃はバリウム検査や胃カメラ検査、腸であれば便の検査が必要です。

意外?!眼底検査で分かることは

眼底検査は角膜にフラッシュを当てることで、目の奥の眼底を観察する検査です。眼底は身体の中で、直接血管を観察できる唯一の場所。全身の血管の健康状態を反映するため、高血圧や動脈硬化、糖尿病の合併症である網膜症などを見つける手がかりとなります。

その他以下の記事で紹介した通り、肺機能検査は主に喫煙が原因となるCOPDの発見に役立ちます。

付加健診、補助を受けられない年も受けるべき?

一般健診と比べてさらに詳しく調べる付加健診は「沈黙の臓器」とも言われる肝臓の病気や、初期に自覚症状の出づらい肺機能、腎機能の低下など、まだ自覚症状の現れていない生活習慣病の早期発見に有効です。

生活習慣病は急速に進行するものではなく、生活習慣の積み重ねによって少しずつ進行します。そのため、付加健診をスポットで実施することで、「自分にどれだけのリスクがあるのか?」「これまで調べていなかった臓器の状態はどうなのか?」を知ることは大切です。

問題が見つからなかった人は毎年受ける必要はありませんが、40歳、50歳の節目で検査を受け、問題が見つかった人は必ずより詳しい検査を受け、経過も観察する必要があるでしょう。

ご所属の健康保険組合によっては、全年齢で受けられるオプション検診を用意していたり、人間ドックを推奨していたりするかもしれません。
検査の内容を理解した上で、各種検査に臨むことによって、健診結果の理解度も深まるはずです。

自身の健康を的確に振り返るためにも、検査の目的を理解し、健診に臨みましょう。

石原 藤樹(いしはら・ふじき)先生

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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