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2022.07.21

何歳から受けるべき?有効性が高い大腸がん検診の開始年齢は【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本では40歳から行われる大腸癌検査ですが、世界的には50歳から行っていることが多いのだそう。何歳から受けるのがオススメなのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Oncology誌に2022年5月5日ウェブ掲載された、大腸癌検診の開始年齢についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

大腸癌検査は何歳から行うのが有効か?

便潜血検査と大腸内視鏡検査を、適宜組み合わせた大腸癌検診は、世界的にもその有効性が確認されている、数少ない癌スクリーニングです。

日本では便潜血を一次検査とした大腸癌検診が、40歳以上で推奨されていますが、世界的には概ね50歳以上を推奨とするという地域が多いようです。ただ、アメリカの専門部会では、数年前から40歳代からのスクリーニングを推奨しています。これは大腸癌の発症年齢が低年齢化していて、50歳未満での事例増加が問題となっているためです。

これまでの臨床データの多くは、50歳以降を対象年齢としているものなので、40歳代でのスクリーニング開始に、どの程度の有効性があるのかについては、まだ実証的なデータは少ないのが実際です。

45歳以前で検査を受けると大腸癌リスクが63%低下

そこで今回の研究では、アメリカの女性の看護師を対象とした、大規模な長期の疫学研究のデータを二次利用して、大腸内視鏡検査の施行年齢とその予後を、比較検証しています。

対象は111801人の女性看護師で、登録時の年齢は26から46歳、1991年から2017年に渡り健康観察が継続されています。

26年を超える観察期間中に、519例の大腸癌が診断されていて、何らかの理由で大腸内視鏡検査を45歳以前で実施した人は、実施しない人と比較して、その後の大腸癌のリスクが63%(95%CI:0.26から0.53)有意に低下していました。

45歳から49歳で内視鏡検査を実施すると、同様のリスクは57%(95%CI:0.29から0.62)、50歳から54歳で内視鏡検査を実施すると53%(95%CI:0.35から0.62)、55歳以上で内視鏡検査を実施すると54%(95%CI:0.30から0.69)の低下、というように算出されていて、確かに50歳以上での検査の有効性は明確ですが、50歳未満で検査を実施することで、より大腸癌のリスクの低減に結び付いていることが分かります。

50歳から54歳で大腸内視鏡検査を施行した人と比較して、45から49歳でその施行を実施した人は、60歳までに診断される大腸癌の累積の罹患率を、10万人当たり72人減少させる有効性があると試算されました。

ぜひ40代から大腸内視鏡検査を

これは症状や家族歴などの理由で、大腸内視鏡検査を施行した人が主体で、大腸癌検診そのものの有効性を検証しているものではない点に、注意が必要ですが、40代での大腸内視鏡検査によって、その後の大腸癌のリスクが低減されることは間違いがなく、今後大腸癌検診の対象年齢とその方法については、より実証的な議論が必要であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36