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2020.12.08

春だけじゃない!秋冬のアレルギーに要注意・前編

kencom公式ライター:松本まや

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鼻がむずむずしたり、目が真っ赤に充血したり。こんなつらいアレルギー症状は、スギ花粉に代表される春の花粉症のイメージが強いですよね。
でも実は、秋にピークを迎える植物アレルギーや、1年中リスクの高いハウスダストアレルギーを持つ人も多いんです。

スギの花粉症同様、いつ発症するか分からないこれら「秋冬のアレルギー」について、アレルギー治療を多く手掛けるふたばクリニック院長の橋口一弘先生に分かりやすく解説いただきました。

橋口一弘(はしぐち・かずひろ)先生

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ふたばクリニック院長
1982年4月慶応義塾大学病院耳鼻咽喉科入局、済生会神奈川県病院、産業医科大学、北里研究所病院(2000年4月耳鼻咽喉科部長、2009年4月臨床教授)を経て、2011年3月ふたばクリニック院長に就任。日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会評議員。日本口腔咽頭学会評議員などを歴任。花粉症対策に力を入れ、NPO法人花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会、花粉情報協会の理事も務める。

花粉やハウスダストのアレルギーはなぜ起こる?

免疫機能の過剰防衛が原因

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花粉症などのアレルギーは、本来身体を防衛する働きのある免疫機能が過剰に作用してしまうことによって引き起こされます。
花粉などの抗原(アレルギーの原因物質)が身体に入ると、これを異物と認識した身体が抗原と反応する「IgE抗体」を作ります。このIgE抗体が、目や鼻の粘膜にある肥満細胞に付着すると、侵入した抗原を外に追い出そうと反応し、鼻水や涙を起こすヒスタミンなどの物質が放出されます。

アレルギーは誰にでも起こりうる

花粉やハウスダストに対するアレルギー疾患は、子どもの頃に何の問題のなかった人でもいつ発症するか分かりません。誰にでも起こりうるのです。
特に、遺伝傾向があると考えられています。

また、食物アレルギーと異なり、基本的に一度発症したら自然に完治することはありません。
一方で、食物アレルギーを持つ人が必ずしも花粉症を発症するとは限りません。

秋なのに花粉症!?意外に多い秋の花粉

秋にも花粉症を引き起こす植物が存在する

秋の花粉症は様々な植物が原因となりますが、ブタクサやヨモギなどのキク科の植物によって引き起こされることが多いです。ブタクサが有名ですが、実は日本人に多いのはヨモギと言われています。飛散のピークは9~10月ですが、気候の影響で年によって飛散する量や期間が異なります。

春の花粉症との違いは?

アレルギー症状に大きな違いはありません。最大の違いは、飛散の影響範囲。スギなどは高いところから飛散するため、数百kmも飛ぶことがあります。ですが、ブタクサやヨモギは背の低い雑草なので、数十m~数百mしか飛びません。
雑草の多い公園などには多いですが、整備された都市部などに飛んでいることは少なく、スギ花粉と比較して、避けやすいと言えます。
雑草の多いところに行く場合には、スギ花粉同様マスクなどで防ぐことが可能です。

また上空で舞うスギ花粉と異なり、足元で舞い上がるので、成人であれば目の症状が出づらいのも特徴です。

特に重篤な症状が出る場合も

秋の花粉症は、スギの花粉症と同様、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎が代表的です。

単体では、重篤な症状が出ることは少ないですが、口腔アレルギー症候群(OAS)といって、スギやシラカバ、ブタクサなどのアレルギーがある人が生の野菜や果物を食べた時に、花粉の抗原と構造の似た物質に対して反応し、口の中にかゆみを感じることがあります。組み合わせは様々ですが、スギ花粉に対してトマト、シラカバの場合にモモに反応するケースなどがあります。

稀にアナフィラキシーショックのような重篤な症状が出ることもあるので、注意が必要です。

秋冬アレルギーはハウスダストも関係する

ハウスダストアレルギーのピークは秋?

ハウスダストの中で主な抗原となっているのは、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニといったヒョウヒダニの死骸や排泄物です。その他に人やペットの毛、フケなどが非常に細かいホコリとなったものがハウスダストです。実は日本の住環境は欧米と比較し、抗原となるダニが多い傾向があるそうです。

主な抗原となるダニは気温25度以上の湿度の高い空間を好みます。梅雨から夏にかけて増えたダニが、気温が下がる秋になると死ぬため、通年性のアレルギーではあるものの、秋ごろにハウスダストアレルギーが悪化することがあります。

アトピー性皮膚炎の原因にも

アレルギーの原因となるハウスダストは非常に小さく、アレルギー性の鼻炎や結膜炎に加え、気道の奥まで入り込んで喘息を引き起こしたり、皮膚を掻いたところから体内に入り、アトピー性皮膚炎の原因になったりすることもあります。

朝イチのくしゃみ、「モーニングアタック」って?

アレルギーをお持ちの人の中には、朝目が覚めた直後に急にくしゃみが止まらなくなる、といった経験がある人も多いのではないでしょうか。
これは「モーニングアタック」と呼ばれ、夜の副交感神経優位の状態から、徐々に活発になって交感神経優位の状態に変わる、身体が一時的に不安定な状態にあることが一因と考えられています。

これからは特に朝の乾いて冷たい空気が刺激となるので、このような症状が出やすくなります。
朝になって人が動き始め、ホコリが舞い上がることも原因のひとつかもしれません。

もはや現代病とえるアレルギーの対策とは

今や、ドラッグストアに行けばアレルギー対策のコーナーがあるほど市販薬が充実しています。
市販薬での対策と病院での治療はどう異なるのか。

飲み薬以外の治療法と合わせ、後編で解説します。

■秋冬に引き起こされるアレルギー対策はこちらから

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。