2020.08.14
隠し味だけじゃない!カレーを美味しく作るコツをスパイス&ハーブマスターが伝授<実践編>
夏になると食べたくなるカレー。スパイシーなカレーの香りを嗅ぐと、食欲がなくても思わず「美味しそう!」と感じますよね。
前編ではカレーの歴史からスパイスについて紹介しましたが、後半ではカレー作りに役立つポイントとレシピをご紹介します!引き続き教えてくださるのは、エスビー食品の遠藤さんです。
遠藤 由美(えんどう・ゆみ)さん
エスビー食品株式会社 広報・IR室
スパイスとハーブの世界の楽しさを広める「スパイス&ハーブマスター」。
全国のセミナー・イベント・料理教室などにおける講師活動や、取材対応など、さまざまな媒体を通じてスパイスやハーブの魅力を紹介する活動を行っています。
普段の味をランクアップ!ルウから作るカレー編
ルウの種類は多種多様。どのように選べばいい?
ルウでカレーを作る場合、まずは好みのルウを選ぶことが大切!
遠藤さん:「どれも同じようなルウに見えますが、フォンドボーのコクと旨みが楽しめるタイプ、スパイスの香りが際立つタイプ、野菜の甘みが特徴のタイプなど、それぞれ製品によって特長があります。
お好みのルウを選ぶことは、食べたい味わいをすぐに作るための第一歩。ただし、同じ中辛でも製品によっては辛さが異なりますので気をつけてください。」
さらにカレーを美味しく作る3つのコツ
せっかく作ったのに何か味が物足りない…。続いては、いつものカレーをグッと美味しくするコツについて紹介してもらいました。
コツ1.玉ねぎをしっかり炒める!
遠藤さん:「玉ねぎのコクはカレーには欠かせないものです。玉ねぎは必ずじっくり炒めましょう。軽く火を通すだけでは玉ねぎの旨味が引き出せません。透明になるまで炒めてさらに水分を飛ばすのがコツです。どうしても時間がない方は、市販されている炒め玉ねぎなどの製品を使うと、簡単に旨味が出せますよ。」
コツ2.沸騰してからしっかり煮込む
遠藤さん:「煮込み時間が足りずに、煮汁に肉の旨味がしっかりと出ていないケースもあります。パッケージに書いてある煮込み時間は”沸騰してから”の時間。水を入れてからの時間ではないので、少なくとも沸騰してから15分は煮込むことをおすすめします。」
コツ3.ルウをいれる時は火を止める
遠藤さん:「ルウを構成する大きな要素はスパイスと油と小麦粉。鍋の中の温度が高すぎると小麦粉に含まれるでんぷんが固まり、ダマになってしまいます。ルウをきれいに溶かすことができるのは、80℃以下の温度。必ず火を止めてからルウを加えてください。」
今回ご紹介したポイントは、全て商品のパッケージに書かれています。そのためレシピに沿って作るのが”美味しい”への近道です。次回作る際は、ぜひよく読んでみてください。
▼ルウから作るカレーのおすすめレシピ(外部サイトへ移動します)
本格的な味に挑戦!スパイスから作るカレー編
スパイスの基本「香り付け」「辛み付け」「色付け」を知ろう!
画像提供:エスビー食品株式会社
スパイスには、「香り付け」「辛み付け」「色付け」の3つの役割があると前編でご紹介しました。
まず要となる「香り付け」のスパイスには、クミン、コリアンダーなどがあります。特にクミンはカレーらしさを出すのには欠かせません。ホールタイプは炒め油にまず投入し、香りを立たせる「スタータースパイス」としても役立ちます。
次に、辛さを引き出す「辛み付け」のスパイスは、チリ―ペッパーやこしょうなど。お子様が食べる場合は控えめに、辛口が好きな方は多めになど、お好みで加減してください。
最後はターメリックをはじめとする「色付け」のスパイス。色が付けば、たちまち本格カレーらしくなります。
基本のレシピは前回の記事に載せているので、色々とアレンジを試してみてください。
■カレー&スパイスがよくわかる前回の記事はこちら
味が物足りない時は「旨味」と「塩」が足りていない?
スパイスカレーを作ってみたものの、なんとなく美味しくないとか、物足りない味になってしまったという方も多いのでは。そんな時は「旨味」と「塩」が足りていない可能性があります。
まずは、旨味となる玉ねぎやトマトなどの具材を積極的に使いましょう。玉ねぎやトマトの旨味成分グルタミン酸が入っていると、カレーの味に深みが出ます。生の玉ねぎやトマトがない場合は、市販の炒め玉ねぎやトマトの水煮缶、トマトピューレ、ケチャップなどを使っても構いません。
また、味が物足りない時は塩加減をチェック。
一般的に販売されているカレールウには、1人前あたり2~2.3gほどの塩が入っています。小さじ1杯が6gですから、4人前なら小さじ1杯強必要になる計算。スパイスだけでカレーを作る時にも、同じくらい塩を入れないと味に締まりが出てきません。
▼スパイスで作るカレーのおすすめレシピ(外部サイトへ移動します)
カレーの美味しさをさらに引き出すちょいテク
肉の下味に「カレー粉」をまぶす
まずご紹介する方法は「肉の下味にカレー粉をまぶす」ことです。
肉がカレー粉の香りをまとって風味が強くなる上に、カレーライス全体にもスパイスの香りがプラスされ、本格的な味わいにレベルアップします。
チキンカレーの場合には、ヨーグルト+カレー粉で鶏肉を漬け込んでから作るのもおすすめ。エキゾチックな風味が楽しめますよ。
辛味と香りをプラスする「ガラムマサラ」
作ったカレーにさらに風味を足したい時は、仕上げに「ガラムマサラ」を加えてみましょう。ガラムマサラは「香り付け」と「辛み付け」のブレンドスパイス。カレーの仕上げに加えると簡単に辛さや香りをプラスすることができます。
ガラムマサラを使えば、食卓で自分のお皿にだけ辛みを足すことができるので、お子様向けに甘く作ったカレーを大人だけ辛くするというアレンジも可能です。
旨味だけでなく「酸味」にも注目!
「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「旨味」という、人間の5つの味覚要素。このバランスの中で人は美味しさを感じますが、カレーという料理の中では「酸味」を意識していない方も多いはず。
実は、カレーにヨーグルトやトマト等の酸味のものを使うと、ほどよい酸っぱさが加わってより奥深い味に仕上がります。少量のビネガーやレモン汁などでも構いません。味に深みが足りないときは酸味不足かも…と考えて、味のバランスを見直してみましょう。
スパイス入りの「炊き込みご飯」で本格度アップ!
おいしいカレーを楽しむなら、ご飯にもアレンジを加えてみませんか?
例えば、クミンライス。炊飯器に米3合に、小さじ1杯のクミンシードと小さじ2杯の油を入れて炊けば完成。一口ほおばればオリエンタルな香りが立ち込め、カレーに合わせると香りのハーモニーを楽しむことができます。
定番のターメリックライスも、油でターメリックを軽く炒めて炊きたてご飯に混ぜれば、あっという間に出来上がり。即席で楽しみたい時にピッタリです。
辛いカレーには「ラッシー」を
辛さというのは、舌にある「痛み」の受容体が刺激されて感じるもの。辛さを抑えたいときは、「痛み」の受容体から遠く離れた「甘味」や「酸味」の受容体を刺激すると、辛味が落ち着きます。
そのため、辛いカレーに甘酸っぱいラッシーを添えるのは理にかなっているのだそう。逆にビールなどの炭酸飲料を飲むと「痛み」の受容体をさらに刺激してしまうのでご注意を。
香り豊かなカレー&スパイスの世界を楽しんで
普段何気なく作っていたカレーですが、隠し味だけでないコツがたくさんありましたね。
またスパイスは、ちょっとハードルが高くて尻込みしてしまうかもしれませんが、普段のカレールウにちょい足ししたり、炒め物に使ったり、肉の下味をつけたりと、スパイスの使い道は多種多様。炊き込みご飯などの楽しみ方もたくさんあるので、自分好みの使い道を模索してみてください。
ぜひこの夏は、自分好みの手作りカレーにチャレンジしてみませんか?
<著者プロフィール>
■小高未絵(おだか・みえ)
フリーライター、フリー編集者、保育士。
保育士資格と子ども4人の子育て経験を生かし、人間関係のコミュニケーション術や子育てノウハウ系の記事を得意とする。大切にしていることは「誰にでもわかりやすく、人の心に寄り添うライティング」。