メニュー

2022.06.25

新型コロナも「ぶり返す」ことはあるのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

風邪が治った直後などに無理をすると「ぶり返す」ということがありますが、新型コロナでも「ぶり返す」事例はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2022年6月8日掲載されたニュース記事ですが、新型コロナウイルス感染症のリバウンドと、それに関わる経口治療薬の関与についての、少し気になる内容です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナ回復後に再度感染するリバウンドとは?

最初にHIV感染症の専門の研究者が、新型コロナウイルス感染症に罹患した事例が紹介されています。

その研究者は倦怠感などの症状が出て、抗原検査とRT-PCR検査で陽性を確認。症状出現から12時間後に、ファイザー社の経口治療薬である、パキロビットパック(ニルマトレルビル・リトナビル)の使用を開始しました。

投与開始後4日の時点で症状は改善。4日目と5日目にも検査を施行して陰性を確認したため、規定によりその時点で隔離を解除しました。

ところが…6日間続けて検査が陰性であった時点で、再び体調不良あり。抗原検査とRT-PCR検査で陽性が確認されました。つまり、一旦回復した筈の感染が、リバウンドした(ぶり返した)としか思えないような事例が、確認されたのです。

実はこうした事例は1件のみではなく、国内外を問わずSNSなどでは複数報告されています。

経口治療薬を使った患者の1~2%でリバウンド

更にはパキロビッドパックの臨床試験においても、全事例の1から2%で、そうしたリバウンド事例があったことが確認されています。

ただ、事例は実薬群でも偽薬群でも、同じように認められていて、薬の影響ではないというのが、製薬会社の見解です。

これはもちろん推測の域を出ないのですが、人工的に薬でウイルスの増殖を短期間抑えることにより、使用期間の5日を終えた時点で、抑えられていたウイルスの再増殖が起こり、それがリバウンドに繋がっているという可能性や、薬剤が身体の免疫機能に抑制的な影響を与え、それがウイルス増殖期間を遷延させるという可能性は、理屈ではあり得るという気もします。

その一方で、オミクロン株の流行以降で、そうしたリバウンド事例が多いことを指摘する報告もあり、オミクロン株は確かに潜伏期は短く、検査が陰性になるまでの期間も短いのですが、その一方で持続感染の事例も多いのではないか、というような可能性もあるのです。

オミクロン株だと持続感染している可能性も

オミクロン株の動態はまだ不明の点も多く、こうしたリバウンドもあり得ることを想定して、今後は慎重に個々の病状経過を、臨床医としては見てゆく必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36