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2016.09.23

【津下先生のメタボの本質⑦:増え続ける医療費】41.5兆円の医療費うち約10兆円が生活習慣病!?

津下一代

1961年に国民皆保険制度が確立されてから、一人あたりの医療費は50年のうちに60倍以上にも膨れ上がりました。医療費を引き上げる生活習慣病を減らすことは、超高齢化社会の最重要課題です。
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

高血圧、糖尿病など“生活習慣病”が医療費を押し上げている

お金がなくて医者にかかれない。我慢しきれず受診した時には手遅れ。こんな悲劇を防ぐため、1961年に国民皆保険制度が確立されました。加入者から保険料を集めて、いざというときに備える健康保険。保険証があれば、どの医療機関でも安く医療が受けられます。

制度開始当時の1人当たり医療費は年間5千円、10年後に5倍、20年後に20倍、50年後の2011年には30万円まで増えました。生活習慣病など慢性疾患が増加した上、高齢化や医療技術の進歩、高額な薬の増加、安易な受診など、医療費高騰の理由は多様です。どうしたらよいのでしょうか。

先日、2015年度の国民全体の概算医療費が41.5兆円と発表されました。
そのうち生活習慣病が約10兆円を占めています。傷病別にみた2013年度のデータでは、高血圧が約1.9兆円、脳血管疾患約1.8兆円、糖尿病約1.2兆円、虚血性心疾患約8千億円。透析など腎疾患も約1.5兆円と、血管が傷む病気が医療費を押し上げています。禁煙、メタボ対策、減塩、運動など生活習慣の改善が自身の健康を守り、医療費を節約、社会貢献につながります。超高齢社会を迎え、個人の努力が一層求められます。

老化による自然な変化には医療に依存しすぎず、治療効果と身体的・経済的負担を考え、冷静で科学的な治療法の選択も必要となるでしょう。

<著者プロフィール>

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■津下一代(つした・かずよ):
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務、12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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