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2016.09.09

【津下先生のメタボの本質⑥:血管にやさしい国】発展途上国が学ぶ日本の生活習慣病対策

津下一代

日本もかつて多かった脳卒中が、減塩や高血圧治療により減少し、糖尿病も早期発見により合併症の患者数が減りました。そして現在は、発展途上国が日本の生活習慣病対策を学ぼうとしています。
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

発展途上国の課題は、低栄養や感染症から、生活習慣病に変化

毎年、発展途上の国々から保健省医務官らが「あいち健康の森健康科学総合センター」に訪れ、わが国の生活習慣病対策を体験しつつ学んでいます。本年度は12ヵ国より12名が参加しました。帰国後は実行可能な予防対策を考え、多くの国で生活習慣病対策のプロジェクトに反映しているという報告を受けています。

日本では高度成長期に多かった脳卒中が減塩、喫煙率低下、高血圧治療などで減少。糖尿病は早期発見で患者数は増えましたが、合併症が出てから初めて発見される人が減りました。メタボ対策で、肥満にも歯止めがかかりつつあります。外国人の目には「血管にやさしい国」と映っているようです。

研修生は口々に生活習慣病対策が進まない理由を述べます。「ビッグ・イズ・ビューティフル」という住民意識(トンガ)。歩いていると暴漢に襲われる治安の悪さ(中米)。国民皆保険も健診制度もない。予防プログラムを実施したいが予算がない(カンボジア)。感染症は国の責務を感じるが、生活習慣病は個人の問題という政府の姿勢もブレーキとなっています。

しかし、統計は語ります。彼らの国でも低栄養や感染症が減り、糖尿病や脳卒中、心疾患が最大の健康問題となっていることを。戦後のわが国の対策を振り返りつつ、「自国でできることは何か」を発見できるよう支援したいです。

<著者プロフィール>

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■津下一代(つした・かずよ):
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務、12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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