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2016.07.01

年間ひとり約6万3千円減も実現!メタボ予防で医療費は減らせる【医師・津下一代コラム】

津下一代

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ある研究では、保健指導を受けたグループの医療費が、指導を受けないグループに比べて減少したという結果が出ました。健康への意識改革が、個人の金銭的負担や健康保険にどのように影響するか?という実態に迫ります。
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介します。

生活習慣の指導を受けたグループの翌年の医療費は?

動機付け支援では20%、積極的支援では35%も医療費ダウン!

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「食生活や運動を改善すれば、メタボを予防し糖尿病等の生活習慣病になる危険性を減らすことができる」。これまでも、健康づくり教室やメタボ予防のための特定保健指導の効果として、肥満度、血圧、脂質等の改善効果を示す研究は多く報告されてきました。国際的な生活習慣介入研究では糖尿病の発症率も半減できることも示されています。
それではこれらの経済効果はどの程度期待できるのでしょうか。

厚生労働省では、メタボの方を対象とした特定保健指導の効果を、実際の医療費を使って分析し、第二次中間とりまとめとして発表しました*。
特定保健指導ではメタボ該当者・予備群の方に、食生活や運動等の実施を促し、内臓脂肪を減少させることによって糖尿病等の予防をめざすものです。そこで、保健指導に参加した人としなかった人で、翌年の生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)関連医療費がどのように変化するかを調べたものです。
それによると、動機づけ支援(結果説明と目標設定、6か月後の評価)では翌年の医療費が20%、きめの細かい継続的なサポートがある積極的支援では35%、参加群の方が少ないことがわかりました。検査値の改善度合いも積極的支援の方が良好でしたので、それとも合致する結果です。

平成20年度特定保健指導積極的支援参加者と不参加者の
翌年度の年間1人当たり入院外医療費の比較(40~64歳)

平成20年度特定保健指導積極的支援参加者と不参加者の 翌年度の年間1人当たり入院外医療費の比較(40~64歳)

北名古屋市で運動に取り組んだ人は年間6万3000円の医療費削減に

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北名古屋市では、市民の健康づくりの拠点、健康ドームで継続的に運動に取り組んだ人と、同性・同年齢の同市国保医療費平均と比較して、一人当たり20%、年間約6万3千円少ないことがわかりました。市の健康づくりへの取り組みが、住民一人ひとりの健康に役立つだけでなく、国保医療費の節約にもつながったということが確認できたわけです。
北名古屋市はこのように積極的かつ戦略的な予防事業を展開していることで、今年度の厚生労働省「健康寿命を延ばそう!アワード」優良賞を受賞しています*。

少子高齢化で健康保険組合への影響は?

7割以上の健康保険組合で赤字に

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産業革命とともに、働く人の健康を守るために始まった医療保障制度。わが国では昭和36年(1961年)に国民皆保険制度となり、国民のすべてが加入し、どこの医療機関で治療を受けても大部分の補助が受けられるようになりました。
平成25年度国民健康保険は11.6兆円(うち前期高齢者6.0兆円)、後期高齢者保険14.1兆円、一人当たり年間の医療費は前期高齢者49.5万円、後期高齢者92万円。国民健康保険の財源は、税金、保険料のほか、働く世代の健康保険組合からの拠出金で賄われています。その結果、健康保険組合においては支出の半分を拠出金が占めることになり、7割以上の組合で赤字となっています。今後の少子高齢化のさらなる進展を考えると、国民皆保険制度の存続が心配される事態です。

個人の健康づくりで、健康保険制度の存続を

健康づくり行動の本来的な目標は健康を維持し、豊かな人生をもたらすこと。その行動の恩恵は個人だけでなく、健康保険制度が存続していくことにも大きな貢献があることになります。

<著者プロフィール>

■津下一代(つした・かずよ):
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務、12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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