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2016.07.15

【津下先生のメタボの本質②仮面高血圧】健診・病院での血圧測定だけだとダメって本当?

津下一代

血圧って健康診断のときしか測らないけれど、実はそれでは十分じゃないってご存知でしょうか?
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

病院では正常なのに日常生活で高い”仮面高血圧”

3年ほど前、血圧に関する研究会で日野原重明先生にお会いしました。当時、御年102歳。半日の全日程を最前列で聴講、若手の発表にユーモアを交えてご助言されるなど、知力、活力は衰えず、敬服するばかりでした。

先生は家庭の血圧測定が健康管理に役立つと、測定法を指導されてきました。その後、電子式家庭血圧計が開発され、広く普及することに。通常は家庭血圧が診察室血圧より5ミリほど低いですが、差の大きい人がいることが分かってきました。家庭血圧は正常なのに医師の前では高くなる白衣性高血圧。緊張すると心拍数が増え、血管が収縮して血圧が上がります。診察室血圧だけを見て薬を処方すると、下がり過ぎる危険があります。

逆に普段は高くても診察室では正常なのが「仮面高血圧」。健診などでリラックスして測れば正常なのに、日常生活で高い時間帯があるタイプです。両者は正常な人より、脳卒中リスクが高いことが注目されています。

そこで家庭血圧を今までより重視し、血圧の変動を見ながら薬の種類や量を調整するなど、高血圧治療が変わりつつあります。手動式の水銀血圧計が開発されて約100年。脳卒中死亡の減少に貢献しました。日野原先生自身も家庭血圧をチェックしながら、しなやかな血管を100年維持されているようです。

<著者プロフィール>

■津下一代(つした・かずよ):
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務、12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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