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2016.11.18

【津下先生のメタボの本質⑪:ウォーキング】スマホと史跡めぐりの歩き旅を

津下一代

ここ十数年の間、現代の人の歩数は減少しているといいます。しかしスマホと一緒なら、工夫次第で歩くことをもっと楽しむことが出来ます。

糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

スマホを手に、すき間時間はウォーキング

東京医科歯科大学

東京医科歯科大学

先日、御茶ノ水(東京医科歯科大学)で午前12時に会議を終えたあと、午後2時から新宿近くの早稲田(国立健康・栄養研究所)で会議がありました。

2時間のゆとりはありますが、食事時間、移動時間を考えると、大した行動はできそうにもありません。これまでの私なら食事をしつつパソコンを開き、メールチェックと次の会議に向けて資料の見直しをして過ごしていたのですが…。

携帯をスマホに変えてから、私の行動パターンが変わってきました。

まず、マップをチェック。東京医科歯科大学から国立健康・栄養研究所までは、歩きで5.2km、1時間5分との表示。食事を早く済ませば、歩けるかもしれません。

経路を見ると、地下鉄東西線に沿って神楽坂、早稲田坂をとおっていきますので、いざ間に合わなければ、地下鉄への方針転換もできそうです。

江戸古地図アプリで、ぶらり旅

江戸の古地図のイメージ

江戸の古地図のイメージ

それにもう一つの楽しみが。江戸古地図も表示できるアプリを発見しました。
東京医科歯科大学は江戸時代には昌平坂学問所(現・湯島聖堂)の隣、江川太郎座衛門さんのお屋敷で、明治時代には女子高等師範学校であったことがわかります。隣の順天堂大学は明治時代の地図にはすでに順天堂醫院として記録されています。

湯島聖堂

湯島聖堂

さて、大学を出た後、神田川、中央線にそって坂を下っていきます。中央線に乗っているときには気づかなかった起伏の落差に驚きます。御茶ノ水分水路、市兵衛河岸の立て看板をスマホで写して、水道橋の交差点へ。東京ドームと後楽園のジェットコースターが見えてきます。江戸時代には水戸徳川中納言のお屋敷、水戸黄門さまゆかりの場所です。小石川後楽園、東京ドーム、ホテル、遊園地は、すっぽり水戸藩邸だったのですね。

東京ドームと観覧車

東京ドームと観覧車

飯田橋で高速道路を渡りますが、じつはこの首都高速5号線池袋線は江戸時代の水路上を走っていることがわかります。

その後、筑土八幡神社、神楽坂通り、早稲田通りを一直線に進むと、国立健康・栄養研究所です。道々、神社・仏閣、昔ながらの細い道のりを楽しむこと、1時間半で到着しました。ちなみに国立健康・栄養研究所は、徳川尾張中納言のお屋敷跡。愛知県民としてちょっと愛着を感じた、というわけです。

パソコンや書類を持ちながらの「ブラタモリ」は少し大変でしたが、足はウォーキングシューズを履いていたので、疲れ知らず。いままで知らない東京を楽しむことができました。

スマホのおかげで、現在地がわかるので道に迷わずに済みますし、名所・旧跡に立ち寄って立て看板を眺めて歴史のお勉強、そしてパソコンにつなげば今撮った写真をすぐにスライドショー、今日の頑張りを目で確認することもできます。まさにジョブズがくれた新しいライフスタイルですね。

飯田橋駅前

飯田橋駅前

コース次第で、探求心を満たす小旅行に

午後の会議はちょうど「エクササイズガイド」のお話でした。この十数年間に歩数が減ってしまったことは明らかになっていますが、これからどうしたら歩く人を増やせるのか…という話題です。

今回の行程は約6,500歩でしたが、ときどき立ち止まって立て看板を読んだり、写真をとったりと、飽きることのない時間でした。楽しみながらのウォーキングをもっともっと広げていきたいですね。

ところで、名古屋周辺の古地図アプリはいまのところなさそうですが、東海道五十三次の古地図や尾張・三河の古地図なら徳川美術館で購入することができます。

最近時間を見つけて、池鯉鮒宿(知立)~鳴海宿、鳴海宿~七里の渡しを歩きました。尾張と三河の境や、いまなお街道沿いに残る寺社、常夜灯、一里塚がウォーキングの疲れを癒してくれます。いつか東海道を全区間制覇できたら…と夢も膨らみます。

著者プロフィール

記事画像

■津下一代(つした・かずよ):
あいち健康の森健康科学総合センターセンター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。
医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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