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2016.10.24

イチロー、ジョブズもハマった?!禅のプロが教える瞑想のコツ【インタビュー】

KenCoM編集部

皆さんは、ここ数年のうちに、「瞑想」が流行しつつあることをご存知でしょうか。

Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズなどの一流ビジネスマンやイチローなどのトップアスリートが取り組んでいたり、Googleなどの有名企業がマインドフルネスを社員の教育プログラムに導入したりと、ここ最近で話題になっているんです。
久賀谷亮さんの『世界のエリートがやっている 最高の休息法』では、科学的根拠に基づいた脳の休め方としても取り上げられています。

今回は、なぜ世界の一流ビジネスマンや企業が「瞑想」や「マインドフルネス」などを取り入れているのか、そしてこれらは本当に効果があるのかというお話を日頃から心を静めて何かに集中するという意味での「瞑想」に携わっている東京禅センターの中山宗祐さんにお伺いしました。

お話をうかがった人:中山宗祐さん

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福島県出身。花園大学を卒業後、埼玉県新座市のにある道場で3年間修行を積み、京都本山・妙心寺の教化センターにて一般の方に向けた行う法話会や坐禅会の運営に2年間携わる。現在は、東京禅センターにて企業への禅研修会や、東京都内の寺院を会場にした坐禅会・写経会などのイベント運営を行っている。また、円光寺の副住職も務めている。

坐禅は、自分の本当の心を見つめるためのもの

ーー早速お聞きしたいんですが、禅における瞑想ってどんな効果があるんですか?

そうですね。いわゆる「坐禅」ですが、そもそも、私たちは坐禅に関しての”効果”というものを説いていないんです。坐禅は、何か効果を得るためのものではないということですね。本来、坐禅というものは、何かを捨てていく行為なんです。

普段、人が学校や社会で生活を送っていると、様々な知識や経験がついていきますよね。そういったものが積み重なっていくとモノの見方が凝り固まっていき、「分別」がつくようになります。そうなると、物事の本質を見失いがちになってしまいます。

坐禅は、心に肉付けされた知識や経験を取り除いていき、本来あるべき自分の心を見つめるという行為なんですね。ですので、瞑想によって何か効果を”得よう”とするのは、矛盾した行為になるんです。

ーー強靭な精神力が身につく、といったものではないんですね。

瞑想をすることで「動じない心」とか「特別な力」みたいなものがものが身につくイメージがあるかもしれませんが、私たちがお伝えしているのは、何ものにも「とらわれない」「こだわらない」「かたよらない」という3つの心を取り戻しましょうということなんです。

坐禅をすることで、自分が何にとらわれているのか・こだわっているのか・かたよっているのかフワフワ浮かんでくるんです。その時に大事にしてほしい心が「いま・ここ・じぶん」です。

「いま・ここ・じぶん」を大切にする

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坐禅をする時に『自分の呼吸の数を数えてください。』と伝えるんですけど、この呼吸の数を数えることに集中できていない時には「いま・ここ・じぶん」のどれか1つが欠けているという状態になっています。

・「いま」が欠けている場合:過去や未来のことを考えてしまっている

・「ここ」が欠けている場合:ここじゃない場所、学校や会社のことを考えてしまっている

・「じぶん」が欠けている場合:友人や恋人、家族のことを考えてしまっている

といったような感じですね。ですので、今ここにいる自分を大切にしていただくことが、坐禅の1つのポイントかなと思います。

ーー「いま・ここ・じぶん」が欠けている状態とは、具体的にどんな状態でしょうか?

例えば、頭の中で『お腹が空いたな』と思ったとします。そうすると『この後、おいしいお店に行きたいな』と考えるかもしれません。次に『携帯でこの辺に良いお店がないか調べてみよう』と考える方もいるでしょう。

こうした思考の連想ゲームが始まってしまうと、それが膨らんでいき、不安や怒り、貪る心になっていくんですね。坐禅中に嫌いな人を思い浮かべてイライラしたりする方もいらっしゃいます。

ーーその場合の対処法などありましたら教えてください。

坐禅では、そういった思考の連想ゲームに気づいたら、まずはそれを捨てるんです。

だから、体験者の方には最初に、湧き出てくる思考に気づいてくださいということ、そして、それに気づいたら捨てるようにしてくださいと説明をしています。連想ゲームをストップさせることで、不安や怒り、これまで身についてきた知識や経験を取っ払って、自分の本当の心を見つめることができます。

ーー禅から生まれたと言われているマインドフルネスについてはどう考えられていますか?

そうですね、禅とマインドフルネスって求めているものが別なんです。「リラックスしていきましょう・そうするとこんな効果がありますよ」というのがマインドフルネス。対して「効果なんてありませんよ。本来の自分たちに戻りましょう」ということを教えているのが禅。互いに否定することはないですが、こういった違いがあると思っています。

ただ、マインドフルネスの場合は、宗教性を排除してしまっているので、感謝したり、モノを大切に扱うという心がなくなったりすることがあります。禅では生活の中で一滴の水にも感謝をしていく、それだけで充実していく気持ちも大切にしていきたいですね。

一流ビジネスマンはなぜ禅を学ぶのか?

ーースティーブ・ジョブズなどトップのビジネスマンが禅を学んだことには、どのような理由があったとお考えですか?

そうですね、私たちは企業に対して禅を普及させる活動をさせていただくこともあります。

例えば、頼れる存在が自分だけという状況の中で仕事に追われる中間管理職の方なんかは、一瞬の判断が大切になります。何かにとらわれていたりすると、その瞬間の判断が鈍ってしまう。自分で正しい判断をくだせるようになりたいという方は、坐禅によって常に自分はどうあるべきなのかというのを見つめる、ということで禅に傾倒されたりしますね。

ですので、スティーブ・ジョブズのように誰かの上に立つ方は、自分自身を拠り所にするために、禅を学んだのかもしれません。

坐禅は心の洗面台

私たちはよく『坐禅は心の洗面台ですよ。』ということをお伝えします。

皆さんは朝起きたら、洗面台の前に立って、顔を洗ったり、歯を磨いたり、髪を整えたりしますよね。鏡で自分自身を見て、乱れに気づいて、それを整えると思いますが、心は鏡に映りません。ですが、坐禅をすると自分の心の乱れが鏡に映したように見えてきます。

そうすると、洗面台で鏡に姿を映して乱れに気づいたらそれを整えるように、坐禅をして気づいた心の乱れを整えるということができる。でも、1年間鏡に向かって身だしなみを整え続けたから、外見がかっこよくなったぞとはならないですよね。坐禅もこれと一緒で、これを積み重ねたからすごい心になったというよりは、毎日続けることで心を毎日整えましょうということなんです。

私たちの生活全てが禅になる

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ーー瞑想には、どんな体勢や場所で取り組むのでしょうか?

そうですね。禅には場所や体勢はあまり関係がありません。

もともと仏教には「禅定(ぜんじょう)をしましょう」という教えがあります。この禅定というのは「心を穏やかにして、集中して自分と向き合う」ということなんですけど、これには型が決まっているわけではありません。禅定を座って行うことを「坐禅」、歩きながら行えば「歩行禅」になるわけです。

姿勢を正して、呼吸を整えて、ゆっくり一歩一歩を踏みしめながら歩いていく、というものが歩行禅ですね。あとは、横になって寝ながら禅定を行う「横臥禅(おうがぜん)」。このように、私たちの生活すべてが禅になるんですよ、という教えが禅宗なんです。

ーー満員電車の中でも可能ですか?

もちろんです。立ちながらそのまま呼吸を整えて、自分自身を見つめれば「立禅(りつぜん)」ということになります。

少し話が変わるんですが、「しゅぎょう」という言葉には「修行」と「修業」の2種類がありますよね。「修業」は特別なワザを身につけるために修めるものですが、私たちは「修行」という文字を使います。

「修行」は1日1日の生活を修めていくということが鍛錬になるので、坐禅をすることもそうですが、寝たり、起きたり、ご飯を食べたり、お経を読んだりなどの全ての行いを禅として修めていくことが修行という字を使った由縁です。だから、坐禅以外にも、生活の中で心を整えていくことが、そのまま修行であって、禅になっていきます。その中の一つとして座って行う坐禅がある、ということなんです。

生活の中に自分を見つめる時間をつくりましょう

ーー最近、若い人やビジネスマンで禅に興味を持つ人が増えましたが、その理由は何だと思われますか?

今はスマホが普及して、一息を入れる時間がない状態、隙間が埋まっている状態が多々あります。
昔だったら公園に行って、ベンチに座ってぼーっとする時間もあったんでしょうけど、今はベンチに座って、スマホを弄る人がほとんどですよね。常に、対象が外に向いている。外から情報が入ってきて、常に外の世界と触れ合っています。

それでは内側を見つめる時間がないので、あえてお寺などに場所に来て、坐禅をする。わざわざ自分自身を見つめる時間をつくりに来ているんです。みんなで坐禅をしている時には、携帯を見れませんから。

ーー最後に、社会でストレスを抱えている方々へのメッセージなどありましたらお願いします。

ぜひ、禅やマインドフルネスを通して、自身を見つめていただいて、心のストレスや不安は自分が作り出していることに気づいていただき、気づいたら一旦呼吸を整えて、その心の連想ゲームをストップしていただければと思います。

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禅の教えは言葉によって伝えられるものではなく、体験することでしか理解できないと言われています。日頃、自分自身を見つめ直す機会の少ない方は、ぜひとも日常の中に禅を取り入れて、瞑想に取り組んでみてはいかがでしょうか。

オフィスでできるイス坐禅の紹介はこちら

日常の中に禅を取り入れる一つの方法として「イス坐禅」と呼ばれる瞑想法があります。こちらの記事では、中山さんから教わった、オフィスで座りながらできる坐禅のポイントを紹介しています。

東京禅センターについて

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東京禅センターは、臨済宗妙心寺派が首都圏に禅を紹介するための布教の拠点また全国各地の檀信徒が上京の際に活用できる場所として、平成17年に設立されました。

学ぶ禅として花園大学や正眼短期大学から教授をはじめ多くの講師の方々に親しみやすい講演をしていただき、体験する禅として各種坐禅体験を通じて初心者の方にも親しみやすい「禅」を提案しています。

(取材・文:KenCoM編集部)

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