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2024.02.05

男性更年期の疑問。男性ホルモンを増やせば骨が強くなる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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女性に限らず男性も更年期を迎えると、男性ホルモンが低下して骨量が低下します。ではホルモンを補充する治療を行えば、骨は強くなるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2024年1月18日付で掲載された、男性ホルモン治療の骨折予防効果についての論文です。

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骨を強化するには男性ホルモンを増やすべき?

女性の更年期症状ほど明確ではありませんが、男性も性腺の機能が低下し、血液の男性ホルモンの数値が低下すると、男性更年期と言って良い状態になります。

その1つの現れが、骨量の低下と骨折リスクの増加です。

男性ホルモンの低下に伴い、骨塩量が低下することや骨折が増えることは、多くの疫学データで実証されている事実です。

その典型的なケースは、前立腺癌の治療におけるホルモン低下療法で、男性ホルモンは前立腺癌の進行を促進するため、男性ホルモンを強く抑制する治療を行うのですが、それにより骨量は低下し、骨折リスクも増加することが確認されています。

それでは、男性ホルモンの補充療法を施行することにより、血液の男性ホルモン濃度を上昇させると、それにより骨折のリスクは低下するのでしょうか?

実は骨量の増加自体はほぼ確認されているものの、長期的に骨折を減らすことが出来るかどうか、という点についてはそれほど精度の高い臨床データが存在していません。

男性ホルモンを補充する治療を行い、骨折リスクを検証

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そこで今回の研究では、アメリカの複数施設において、血液の男性ホルモンであるテストステロン濃度が、300ng/dL未満と低値であることが確認されている、年齢が45から80歳で心血管疾患のリスクを持つ、5204名の男性を、本人にも担当者にも分からないように、くじ引きで2つの群に分けると、一方はテストステロンの外用剤を毎日使用し、もう一方は偽の外用剤を使用して、中間値で3.19年の観察を施行し、その間の骨折リスクを比較検証しています。

その結果、臨床的に診断された骨折は、テストステロン使用群の3.50%に当たる91名に発症したのに対して、偽薬群では2.46%に当たる64名に発症していて、テストステロンの使用は当初の予測に反して、骨折のリスクを43%(95%CI:1.04から1.97)、有意に増加させていました。

男性ホルモンの骨折予防効果は明確ではなさそう

つまり、骨量を増やして骨折を予防する筈のテストステロン治療が、逆に骨折を増やしていた、という意外な結果です。

何故このような結果になったのでしょうか?

正確な原因は不明ですが、今回の研究では比較的軽症の事例が対象となっていて、骨折リスクそのものも低かったことが、その原因の1つとして考えられています。外用剤のみの治療では、充分な有効性がなかった可能性も指摘されています。

いずれにしても、現時点ではテストステロン治療の、男性ホルモンが低めの男性に対する骨折予防効果は、実際には明確に証明はされていない、とそのように考えておくのが良いようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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