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2023.10.16

若年層のがんが増加中?最も増加率が高かったがんは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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がんは比較的高齢な人に多い病気というイメージがありますが、近年50歳以下の若年層でがんに罹る人が増えているそうです。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2023年8月16日付で掲載された若年発症の癌の疫学についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

若年層のがんは何歳まで?

例外として小児癌や血液系の癌などはありますが、癌は基本的には中高年の病気と考えられています。多くの癌は遺伝子の変異が、経年的に積み重なって生じる性質があるので、ある程度の長い期間を掛けて、発生するものと考えられているからです。

そして通常の癌と区別する意味で、例外的に50歳未満で発症する癌を、若年発症癌のように呼んでいます。

ところが…1990年代以降、世界的に若年発症の癌が増加していて問題となっています。そのため世界的には多くの癌検診(スクリーニング)は、50歳以上の年齢層で施行されているのが実際です。

がんの発症は若年化している

今回の研究はアメリカにおいて、国立癌研究所のデータを元に、2010年から2019年の動向を調査しているものです。

その結果、2010年から2019年の10年で、毎年人口10万人当たりの年齢標準化癌罹患率は、50歳未満で診断された癌では1年で0.28%増加していましたが、50歳以上で診断された癌では0.87%低下していました。

つまり癌の発症は若年化しているというデータです。

2019年の若年発症癌で最も多かったのは乳癌ですが、2010年から2019年の10年で最も増加していたのは、消化器系の癌で、人口10万人当たりの年齢標準化罹患率は、1年で2.16%増加していると計算されました。特に増加が著明であったのは、虫垂癌で15.61%、肝内胆管癌で8.12%、膵臓癌2.53%の順でした。

特に消化器系のがんが増加傾向に

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このように今回のアメリカのデータにおいては、この10年で若年発症の癌は毎年増加していて、特に虫垂癌などの比較的診断の困難な消化器系の癌において、その増加が顕著に認められました。

アメリカのみならず世界的に、癌の発症年齢の低年齢化とその頻度分布が、変化しつつあるのは確かなことで、今後こうしたデータを元にして、癌の予防戦略が現実に即した、より精度の高いものになることを期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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