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2023.09.26

認知症の進行に食事が影響?MIND食の認知症予防効果について【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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身体は食べたものの栄養で作られていくため、食生活に気をつけるのは健康の基本。しかし、食事の内容がどの程度病気の進行に影響するかまではわからないことも多いようです。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2023年9月17日付で掲載された、認知症の進行に与える食事の影響についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

健康的な食生活を送れば、認知症も予防できる?

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心血管疾患や高血圧症の予防のために、有効とされている食事療法が、認知症の予防にも役立つという知見は幾つかあります。

その代表は「MIND食」と呼ばれるもので、これは心血管疾患のリスクを下げる地中海ダイエットと、高血圧の予防効果があるとされるDASH食を組み合わせたものです。具体的には、全粒穀物や野菜、豆、鶏肉、オリーブオイル、魚などを多く摂り、赤身肉、バターやマーガリン、チーズ、白いパンやお菓子などは控えるという食事です。

こうした食事習慣が認知症を予防したとする、観察研究のデータは幾つかあるのですが、くじ引きで対象を選んで比較するような、より厳密な介入試験のデータはこれまで殆どありませんでした。

3年間のMIND食を継続したときの認知機能を検証

そこで今回の研究はアメリカの2施設において年齢が65歳以上でBMIは25以上、登録の時点で認知機能低下はなく、認知症の家族歴のある604名をくじ引きで2つの群に分けると、一方はMIND食を継続し、もう一方は軽度カロリー制限のみの通常食を継続して、3年の経過観察を施行しています。

その結果、両群で認知機能には軽度の改善が認められ、両群間の明確な差は認められませんでした。MRI所見での検証でも、両群に差は認められませんでした。

今回の結果をどのように考えれば良いのでしょうか?

3年程度の期間だと大きな違いはなさそう

不摂生が認知症の進行にも影響を与えることは事実だと思いますが、自分で注意出来るレベルの食事改善でも、科学的に検証されたMIND食でも、少なくとも3年程度の期間においては、それほどの違いはないようです。

このように観察研究では有効性が認められても、厳密な介入試験を行うと差がない、というケースは、他のサプリメントや食事療法でも、しばしば見られる現象で、サプリメントや食事の効果は、「そのレベルのもの」と考えて、可能な範囲で気楽に継続することが吉であると、そう考えて大きな間違いはないようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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