2023.09.01
ダイエット飲料によく使われる人工甘味料、その健康リスクとは?【kencom監修医・最新研究レビュー】
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ゼロカロリーのダイエット飲料に、使われている人工甘味料。人工甘味料の一部には健康リスクがあるという研究もあり、気になる方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、CMAJ誌に2017年7月17日付で掲載された、人工甘味料の健康影響についてのメタ解析の論文です。(※1)
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人工甘味料の健康リスクとは?
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ゼロカロリーのダイエット飲料の、身体への影響については様々な意見があります。その一部は以前何度か記事にもしましたし、本にも書きました。
最近ではWHOに属する国際癌研究機関(IARC)が、人工甘味料として広く使用されているアスパルテームに、発癌性が否定出来ないとする、安全性の検証結果を公表して報道もされました。(※2)
ただ、これは区分のグループ2Bという、「人に対して発癌性のある可能性がある」という括りのもので、4種類ある発癌性区分の下から2番目のものです。同様の区分の中には300種類以上の物質が含まれていて、漬物なども一緒に入っています。
従って、改めて過剰な使用に注意喚起したという側面はあるものの、危険をあまり煽るような報道は、適切ではないように思います。
今日はこの人工甘味料の様々なリスクについて、まとめておきたいと思います。
人工甘味料はダイエットに役立つのか
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人工甘味料は、高価な砂糖の代用として開発された、サッカリンがその始まりで、その後アミノ酸の一種であるアスパルテームや、スクラロースなど、多くの「代用砂糖」が開発されました。
これはそもそもは高価な砂糖の代用品として、商品価格を下げることが目的で、サッカリンと言えば安かろう悪かろうという、どちらかと言えば悪いイメージしかなかったのですが、カロリーのないことを逆手に取って、ダイエット目的や健康に良いというイメージで、急速に普及することになったのです。
サッカリンには発癌性の危惧があって、今でも使用はされていますが、その後開発されたアスパルテームやスクラロースの方が、今では主に使用されています。普及しているダイエットコーラでも、使用されているのはアスパルテームやスクラロースが主です。
砂糖の入っているコーラを飲んでいた人が、それを人工甘味料の入ったダイエットコーラに変えれば、摂取カロリーは減り、特に肥満の方や糖尿病の傾向のあるような方では、より健康にメリットがあるように、普通に考えればそう思えます。
しかし、人工甘味料の使用により、体重が減少して血糖コントロールにも良い影響が見られた、という臨床データがある一方で、むしろ体重が増加して糖尿病の発症リスクも増加した、というような相反するデータも得られています。
人工甘味料が舌の甘味受容体に結合することにより、身体が反応してインスリンを分泌し、それが空腹感を増強するため、結果として過食が誘発されるのでは、という仮説があります。
人工甘味料を使うとBMIが増加?
今回の研究は論文発表の時点までの、7つの介入試験データと30の疫学研究データを、まとめて解析したメタ解析です。
介入試験に含まれる1003名のデータをまとめて解析したところ、人工甘味料の使用は、体格の指標であるBMIに明確な影響を与えていませんでした。
要するに、ダイエットに対して有効でも無効でもない、という結果です。
一方で疫学研究に含まれる、405907名のデータをまとめて解析した結果では、人工甘味料の使用は若干のBMIの増加と関連が認められました。また複数の疫学データにおいて、人工甘味料による肥満や糖尿病、心血管疾患リスクの増加が認められました。
リスクは軽微だが使用は慎重に
このように、人工甘味料は健康に無害とは言えず、そのリスクはいずれも軽微なものではあるので、必要以上に忌避する必要はありませんが、そのダイエット目的などの過剰な使用は、慎重に考える必要がありそうです。
記事情報
参考文献
著者/監修医プロフィール
■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36