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2019.09.25

寝る前の入浴は睡眠にどんな影響を与えるか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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皆さんが普段行っている「寝る前の入浴」。実は、湯温や湯に浸かる時間によって、睡眠に様々な影響を及ぼすのだとか。
では、どのような入浴法が一番いいのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のSleep Medicine Reviewsに掲載された、入浴やシャワーがその後の睡眠に与える影響についての論文です。
独立した臨床研究ではなく、これまでのデータをまとめて解析した、システマティックレビューとメタ解析による検討です。

▼石原先生のブログはこちら

寝る前のお風呂がいい眠りを導く

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寝る前にお風呂やシャワーを利用することが、その後の眠りを改善するというのは、ほぼ常識として捉えられている考え方です。

ただ、入浴が健康に良いという考え方は、古代ギリシャのヒポクラテスの見解に既にあり、16世紀のヨーロッパでは温泉が傷の治りを早くする、というような考え方は見られますが、寝る前の入浴がその後の睡眠に良い影響を与える、という考え方自体は意外に新しく、20世紀に入ってからのもののようです。

その後多くの臨床研究が発表され、大部分は入浴が睡眠に与える影響を、肯定的に捉えていますが、個々の研究の条件はまちまちで、個別の対象者数もそれほど多いものではないので、現状入浴の睡眠への効果は、確定的とは言えないのが実際です。

入眠しやすい入浴方法とは?

就寝2時間前に、40~42.5度の湯に10分以上浸かると効果あり

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そこで今回の研究では、これまで発表された報告のデータを、まとめて解析する手法で、この問題の現時点での評価を検証しています。

その結果、湯温が40から42.5℃のお湯を利用した、入浴やシャワー、足浴を、睡眠の1〜2時間前に10分以上行うことにより、入眠までの時間が短縮し、睡眠の質にも良い影響が見られることが確認されました。

温かいお湯で適度に皮膚の表面を温めることにより、皮膚表面に近い部分の血流が増加し、それに伴い深部の体温はむしろ低下します。この深部体温の低下が睡眠を誘導するので、スムースに睡眠に入りやすくなるというメカニズムが想定されています。

これ以上高い温度になると、交感神経が緊張して深部体温も上昇するので、睡眠には入りづらくなり、これより低い温度では血流の移行や、皮膚からの熱の発散がスムースに起こりません。

ただ、こうした知見はそれそれには、少数の事例で検証されているだけなので、入浴が睡眠に与える影響を科学的に実証するには、より条件を一定にして例数を増やした検証が、必須であると考えられました。

入浴で深部体温を下げるのが心地よい眠りのコツ

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よく入浴による睡眠誘導の説明としては、身体が一旦温められてそこから冷えるので、その時に睡眠に入りやすいという説明がなされますが、今回の論文に書かれていることはそうではなくて、入浴は皮膚表面に血流を移動させることによって、むしろ深部体温は低下させるので、それが入眠の誘導に有効ということであるようです。

入浴にはその温度や時間や入浴法によっても、様々な生理的変化の違いがあり、睡眠への効果も決して一定のものではないようです。

ただ、一般の皆さんにとっては、入浴により心地良く眠りに入れればそれで良いので、こうした科学的検証は、蘊蓄以上の意味はないものかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36