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2023.03.24

糖尿病治療薬SGLT2阻害剤は、糖尿病の合併症であるドライアイにも効く?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今話題の糖尿病治療薬SGLT2阻害剤には、抗炎症作用があり、さまざまな病気の予防にも効果があることがわかっています。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2022年9月22日ウェブ掲載された、糖尿病治療薬のドライアイに対する有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

SGLT2阻害剤を使った糖尿病治療でドライアイも予防できるか?

糖尿病における目の異常と言えば、眼底に出血などが起こる糖尿病性網膜症が有名です。ただ、それ以外にも糖尿病に関連する目の異常は報告があり、その1つが目の表面が乾燥して痛みなどを伴うドライアイです。

ドライアイは糖尿病患者の2割は罹患している、というほど頻度の高い合併症です。

糖尿病でドライアイが生じるメカニズムは、まだ不明点が多いのですが、涙の分泌を減少させ、角膜の炎症を来して、それが悪循環になってドライアイが進行する、というように説明されています。

それでは、糖尿病自体の治療により、ドライアイの予防も可能なのでしょうか?

近年評価の高い経口糖尿病治療薬に、尿へのブドウ糖排泄を増加させる作用を持つSGLT2阻害剤があり、この薬は抗炎症作用を持つことが推測されているため、ドライアイの予防にも有効な可能性が想定されます。

SGLT2阻害剤とドライアイのリスクを検証

そこで今回の研究では台湾において、医療データを後から解析する手法で、新規にSGLT2阻害剤を開始した糖尿病の患者を、別個の治療薬であるGLP1アナログを開始した患者と比較して、ドライアイのリスクを検証しています。

新規にSGLT2阻害剤を開始した10038名の糖尿病患者を、GLP1アナログを開始した1077名と比較したところ、観察期間中にドライアイを発症するリスクは、SGLT2阻害剤使用群の方が、22%(95%CI:0.68から0.89)有意に低下していました。

SGLT2阻害剤でドライアイも予防可能

これはまだ確定的な知見とは言えませんが、ドライアイも糖尿病治療により予防可能、という結果は非常に興味深く、今後の検証の蓄積に期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36