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2023.02.21

大腸内視鏡検査、一度受けたら次はいつ受けるべき?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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大腸癌の早期発見にとても有効な大腸内視鏡検査。一度異常なしと診断されたなら、次は何年後に受けるべきなのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2023年1月17日ウェブ掲載された、大腸ファイバーの検査で異常が見られなかった場合、次の検査はどのくらいの間隔で受けるべきなのかを、検証した論文です。(※1)

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大腸内視鏡検査は何年おきに受けるべき?

50歳以上の年齢において大腸の内視鏡検査を施行することは、大腸癌の早期発見のためのスクリーニングとして有効性が高く、50歳で1回の内視鏡検査を施行することで、その後の大腸進行癌のリスクや、大腸癌により死亡するリスクを低下させることが、多くの精度の高い臨床データにより実証されています。

もし、その検査において、経過観察の必要な前癌病変やポリープなどが認められれば、その必要性に応じて検査は繰り返されることになります。

ただ、ここで1つの問題は、癌検診としての初回の大腸内視鏡検査において特に異常が認められなかった場合、次の検査はそのくらいの間隔を空けて施行するのが最も有効性が高いのか、という点にあります。

日本は5年、欧米では10年間隔

これは日本では、概ね「5年はやらなくて大丈夫ですよ」と言われるケースが多いと思います。

一方でアメリカを初め多くの海外のガイドラインにおいては、10年は間隔を空けて良い、と記載をされていることが多いのです。

その1つの根拠となっているのは、2019年に発表されたメタ解析の論文で、そこでは一度大腸内視鏡検査で異常がなかった場合、その後10年以内に進行癌が発見される可能性は非常に低い、という知見が得られています。(※2)

しかし、このメタ解析で対象となっているデータは、個々にはそれほど対象者が多くなく、単独の臨床データにおいて再検証される必要性が指摘されていました。

また10年空けることで問題ないとすれば、15年空けるとどうなのか、それほど違いはないのか、それとも癌のリスクは明確に増加するのか、というような点についても正確なことは分かっていません。

14年を超えた間隔の検査でも罹患率を抑制

今回の研究は男性50歳、女性55歳以降で、大腸癌スクリーニングとしての大腸内視鏡検査を施行しているドイツにおいて、スクリーニング後の長期経過を観察し、この問題の検証を行っているものです。

スクリーニングの大腸内視鏡検査を施行した、トータル120298名の経過を観察したところ、初回の検査でポリープなどの所見がなかった場合、10年後に施行された大腸内視鏡検査での、大腸癌と粘膜内癌(advanced adenoma)を併せた罹患率は、女性で3.6%、男性で5.2%でした。

これが初回検査から14年以上経過して施行された場合、罹患率は女性4.9%、男性で6.6%に増加しています。

ただ、期間に関わらず、施行された全ての大腸内視鏡検査における罹患率は、女性7.1%、男性11.6%ですから、14年を超えた検査においても、その罹患率は抑制されていることが分かります。

癌発見のリスクは女性より男性で高く、年齢が75歳以上で増加しているので、初回の検査で異常のない場合の、75歳未満の女性における大腸癌発見のリスクは非常に低く、10年を超える間隔を空けても問題はないと考えられました。

国によって方法はさまざま

日本においては、頻度が低くても癌を見落とすべきではないという考え方が強く、一般の方も頻回の検査を希望される傾向が強いので、所見がなくても5年に一度の検査が施行されることが多いのですが、コスト意識を重視する欧米では、むしろ大腸内視鏡検査のスクリーニング間隔はより長くするべきだという議論があり、この論文においても条件によっては10年以上の検査間隔が望ましいのではないか、という結論になっています。

これはどちらが正しいと単純には言えませんが、癌のスクリーニングのあり方には、国内外でかなりの考え方の違いのあることは、個々に確認しておく必要があると思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36