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2019.09.13

血圧対策に減塩?食事で注意したい塩分のコト

kencom公式:管理栄養士・圓尾和紀

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血圧が高くなると「塩分を控えましょう」とよく言われます。その理由はご存知でしょうか。これは塩分の水分を引き込む性質が関係していると言われています。この性質により、体内に塩分が溜まると血液中の水分が増えて血管を圧迫し、血圧が上がると考えられています。ホースの中にパンパンに水が詰まっている様子を想像するとイメージがわきやすいですね。

塩分を制限すれば血圧は改善されるのか?

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必ずしも改善されるわけではない

それでは塩分を制限すると必ず血圧が下がるかというとそうでもなく、実際に一日の塩分量を制限しても、すべての人で血圧の値が改善されるわけではありません。現在も議論と研究がされています。
とはいえ、塩分のとりすぎは血圧だけでなく胃がんの発症にも関連していると見られているため、やはりとりすぎは控えたほうが良いでしょう。

塩分を多く含む食材の代表格とは

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加工食品は塩分を多く含んでいる

塩分の多い食品としてまず挙げられるのが保存食です。ソーセージやベーコンなどの肉の加工品や明太子、干物などの魚の加工品、漬物や梅干し、キムチなどの野菜を塩漬けしたものは塩分が高いです。また、基本的に万人が満足する味つけになっている外食やコンビニのお弁当、インスタント食品なども塩分は多い傾向にあり、特にラーメンやうどん、そばなどの麺類は、スープまですべて飲んでしまうと塩分が高くなりやすいです。普段から外食が多い方は塩分をとりすぎている可能性が高いです。

一日の塩分の目安はどれぐらい?

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日本国内の基準では6〜8gを意識するのがよさそう

厚生労働省では一日の塩分摂取目標量を男性8g、女性7gとしています。では現在日本人はどれくらい塩分をとっているかと言いますと、平成29年の調査では平均して一日9.9gという結果でした。目標量を超えてしまっていますが、これでも日本人の塩分摂取量は平成を通してどんどん減っており、一番多いときよりも3g以上減っています。

また、この目標量は健康的な人に対しての量で、高血圧の方に対してはどうかと言いますと、日本高血圧学会は一日6g未満が望ましいと、より厳しい基準を提示しています。また、世界ではどうかと言うと、WHO(世界保健機関)は一日5g未満にすべきと、日本の高血圧の方よりもさらに厳しい基準を示しています。ただ、これは食文化の違いもあるので一概に日本の食事が問題だと言うことはできないでしょう。

塩分の多い献立は?

身近な外食や中食のメニューで塩分量がどのくらいなのか一例をご紹介します。

【和食】
・焼きさば定食(味噌汁、ひじき煮物、漬物付き)…4.8g
・鶏と野菜の黒酢あん定食(味噌汁、漬物付き)…6.4g
・とんかつ定食(味噌汁、漬物付き)…6.3g
・牛丼…2.0g
【洋食】
・目玉焼きハンバーグ…2.5g
・ポークカレー…3.3g
・海鮮グラタン…2.5g
・ミックスピザ(一人前)…1.7g
【中華】
・チャーハン…5.5g
・海老のチリソース…4.4g
・酢豚…2.1g
・焼き餃子(5コ)…2.8g
【麺類】
・醤油ラーメン…5.3g
・きつねうどん…5.9g
・ざるうどん…2.9g
・ミートソーススパゲティ…5.7g
【その他】
・おにぎり(辛子高菜)…1.4g
・唐揚げ弁当…4.6g
・ミックスハム野菜サンド…1.7g
・カップラーメン…5.1g
(参考:「外食のカロリーガイド」女子栄養大学出版部)
※同じメニューでも調理法やお店によってかなり差があります。

こうして見ると外食で塩分一日8gや6gを守るのはなかなか困難だということが分かります。洋食は一見塩分が少ないように見えますが、一緒にパンも選ぶとパン自体に塩分が入っている(食パン6枚切り1枚で0.8g、ロールパン2コで0.7gなど)ことも知っておいてください。

一汁三菜の食事で塩加減に気をつけるポイント

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出汁を使って旨味を活かす献立を

さて、次に自宅で料理をしていくときのポイントを見ていきましょう。たとえば一汁三菜で献立を考えようというときにはどんなところに気をつけていけばよいのでしょうか。

まずは汁物ですが、汁物の塩分を控えるために効果的なことはまず出汁を活用することです。うま味のきいたおいしい出汁をとって使うことで、塩分が少なくても美味しさを感じやすくなります。

また、具をしっかりと入れることも大事。野菜、きのこ、海藻にはカリウムというミネラルが多く含まれており、このカリウムが余分な塩分を身体の外に出してくれる働きがあります。塩分を気にして味噌汁を控えるという方もいらっしゃいますが、味噌汁の塩分は血圧上昇には関係ないというデータもありますし、味噌にはさまざまな健康効果もあることを考えるともったいないようにも思いますね。

出汁以外にも、料理をするときに酸味をうまく活用したり、ねぎやしょうが、わさびなどの薬味をたっぷり使うと薄味でも美味しく食べられる料理になります。たとえば醤油を酸味のあるポン酢に変えてみる、なんていうのも手軽にできる工夫です。

減塩食材は使うべき?

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添加物が含まれれていることもあるのでほどほどに

現在では食品に使う塩分を減らした”減塩食品”も多く利用できるようになっています。減塩の醤油や味噌、梅干しに漬物をはじめとする加工品などでも「減塩」という表示をよく見かけます。塩の一部を別のものに置き換えた減塩の塩というものもあります。体の状態によって厳しい塩分制限が必要な場合などは、こういった食品を活用することで食生活に彩りあるものになると思います。

しかし、減塩食品の中には塩分の少なさを補うために食品添加物を多く使われていることがあります。もし気にされるようであれば、無理して使う必要もないでしょう。栄養で考えるべきなのは塩分だけではありません。全体のバランスも大切にしながら塩とうまく付き合っていきたいものですね。

参考文献

渡邉敦光「味噌力」かんき出版
「外食のカロリーガイド」女子栄養大学出版部

著者プロフィール

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■圓尾和紀(まるお かずき)
株式会社ふること代表。“伝統食の良いところを現代に取り入れる”をコンセプトに活動する管理栄養士。テレビ、雑誌、ラジオなどのメディアへの出演やYoutube「カラダヨロコブチャンネル」でも情報発信を行っている。著書に『地味だけど「ほっとする」食べ方』がある。

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