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2023.01.26

食べると10年長生きする!?福島県の「じゅうねんぼたもち」とは【ニッポン地元メシ#37】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

東北地方の中でも一番南に位置し、関東と隣接する福島県。面積は北海道、岩手に次いで全国3番目の広さとなります。山や海はもちろんのこと、阿武隈川や猪苗代湖といった豊富な水資源にも恵まれた自然豊かな土地です。

そして福島県は、南北に連なる阿武隈高地と奥羽山脈を境に、西から会津・中通り・浜通りの3つの地域に分けられ、それぞれ気候に特徴があります。夏場(特に盆地)の日中は蒸し暑く、冬場は全国屈指の豪雪地帯にもなる会津、浜通りと会津の中間的な気候で夏は蒸し暑く1日の寒暖差があり、冬は寒く雪も降る中通り、そして太平洋に面し、夏はそれほど気温が上がらず、冬も雪があまり降らない浜通り。各地域の異なる気候変化により、福島県では数多くのおいしい食材が生み出されます。

特に県内で生産量が多く、全国でも上位に位置する米、地鶏、きゅうり、アスパラガス、トマト、日本梨、桃、なめこ、ヒラメ、福島牛、りんどうの11品目は『ふくしまイレブン』と呼ばれています。

豊かな自然と食材を誇り、様々な郷土料理が存在しますが、今回は『じゅうねんぼたもち』を紹介します。

『じゅうねんぼたもち』とは?

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_20_fukushima.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_20_fukushima.html)

ぼたもちは、もち米(または、もち米とうるち米をあわせたもの)を炊いて丸め、つぶしたあんこで包んだ和菓子のひとつですが、『じゅうねんぼたもち』とは一体どんなものなのでしょうか。

正解は、擦ったエゴマ(じゅうねん)をお米にまぶしたもの。福島県はエゴマの産地でもあり、その歴史は明治時代以前ともいわれています。

エゴマが“じゅうねん“と呼ばれるのは、栄養価が高く、食べれば10年長生きすると言われていたから。また、エゴマの種子は収穫から10年経っても土に蒔けば発芽する長寿命の種だからという説もあります。

また、標高の高い山間部では胡麻の栽培が難しかったことから、エゴマを栽培されるようになったともいわれています。

じゅうねんぼたもちの作り方

通常のぼたもちと同様に、もち米とうるち米の配合は各ご家庭やお店によって異なりますが、お好みの割合で炊いたお米がベースとなります。

フライパンにエゴマを入れ、2、3粒がパチパチとはじけるまで煎った後、すり鉢で油が出るまでよく擦り、エゴマと同量の砂糖とほんの少しの塩を混ぜ合わせます。あとは握ったお米に擦ったエゴマをまぶして完成です。

小豆を炊く手間もなく、シンプルでおいしいぼたもちができるのは嬉しいですね。

エゴマの栄養がすごい!

エゴマは近年、その栄養価の高さで注目を集めており、n-3系脂肪酸が多く含まれるという特徴があります。n-3系脂肪酸は、血圧やLDLコレステロールを下げる働きがあると言われており、これによって動脈硬化や血栓の予防にもつながります。

n-3系脂肪酸には、DHA、EPA、α-リノレン酸の3つがあり、青魚にも含まれるDHAやEPAが有名です。エゴマに含まれているのはα-リノレン酸で、これはくるみにも含まれています。これらは体内では作られないため、食事から摂るべき必要不可欠な栄養素です。

エゴマの栄養素を知ると、”じゅうねんを食べると10年長生きする”という呼び名の由来が納得できますね。

その小さな見た目からは想像がつきませんが、ごまからごま油が搾ることができるようにエゴマからも油が搾れ、エゴマ油は今や全国のスーパーで扱われています。しかしエゴマに含まれるn-3系脂肪酸は、熱や光、空気によって酸化しやすいという特徴があり、使用する際は加熱用や揚げ物ではなく、サラダや冷ややっこなどにかけてドレッシング感覚で使用することをおすすめします。保管は直射日光が当たらないところで保管し、開封後は使用期限に関わらず、早めに使い切るのがよいでしょう。

エゴマを使った郷土料理を楽しもう!

画像:福島県観光情報サイト ふくしまの旅 観光フォトライブラリ

画像:福島県観光情報サイト ふくしまの旅 観光フォトライブラリ

福島県内で多く栽培されているエゴマ。

じゅうねんぼたもち以外にも、擦りつぶしたエゴマに味噌、酒、砂糖、みりんを加えてじゅうねん味噌を作り、つぶしたお米を丸めて味噌をつけて焼く『しんごろう』という郷土料理もあります。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_28_fukushima.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_28_fukushima.html)

さらに擦りつぶしたエゴマを砂糖、味噌、醤油と混ぜ合わせ、水でのばしたつけダレを作り、冷たいうどんといただく『じゅうねん冷だれ』もあります。

おやつとしても食事としても親しまれてきた栄養価の高いエゴマは、まさに福島県民を支える縁の下の力持ちなのかもしれません。みなさんも福島県に行かれた際は、エゴマ(じゅうねん)を使った郷土料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

記事情報

参考文献

1.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/fukushima.html)
2.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_21_fukushima.html)
3.農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/30_28_fukushima.html)
4.e-ヘルスネット|厚生労働省(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html)
5.福島県Webサイト(https://fukushima-pride.com/)
6.福島県Webサイト(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/111837.pdf)
7.日本食品標準成分表2020年版(八訂)(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html)

著者プロフィール

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磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

制作

文:磯村 優貴恵

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