2022.12.23
海老の天ぷらと野菜のかき揚げ、油が多いのはどっち?【管理栄養士がジャッジ Vol.72】
早いもので、今年も残すところわずかとなりました。地域を問わず大晦日にいただく料理といえば、年越しそばですよね。その際、天ぷらそばを召し上がる方も多いのではないでしょうか?
今回は、ちょっと気になる天ぷらの油の量についてお伝えします。
海老の天ぷらと野菜のかき揚げ、油が多いのはどっち?
正解は、野菜のかき揚げ
カラッと揚がった天ぷらは食欲をそそるもの。ただ天ぷらは、カロリーが高く太りやすいイメージがありますよね。その中でも特にかき揚げは、油を含みやすい「吸油率」の高いメニューです。
吸油率とは、揚げる前の食材(衣なし)に対して、揚げた後(揚げる前の材料+衣)の食材が、どのくらい油を吸収したのか割合で示したものです。吸油率は調理によって異なりますが、衣が多くつくほど吸油率は高くなる傾向にあります。
・表面積の大きいものは、吸油する面が大きいため吸油率が高くなる(平たいもの、細く切ったもの、小さく切ったものなど)。
・水分の多い材料は、水分と揚げ油とが置換されるため、吸油率が高くなる。
・脂質量の多い材料は、脂質と揚げ油とが置換されるため、吸油率としてはあまり高くならない。
海老の天ぷらとにんじんとごぼうのかき揚げで比べると、海老の天ぷらの吸油率は12%、にんじんとごぼうのかき揚げは74%です。(※吸収率は『調理のためのベーシックデータ第6版』より)油の吸油量は、揚げる前の食材の重量(衣なし)に吸油率をかけて算出します。
<海老の天ぷら>
・海老1尾23g 18kcal/吸油率12%
・衣10g 14kcal
つまり、吸収した油は2.7g、カロリーにすると24kcalになります。
海老の天ぷら全体のカロリーは、海老18kcal+衣14kcal+油24kcalで、56kcalとなる計算です。
かき揚げも同じように計算してみましょう。
<にんじんとごぼうのかき揚げ>
・にんじん5gとごぼう5g 合わせて5kcal/吸油率74%
・衣32g 46kcal
吸収した油は7.4gで66kcalになります。
かき揚げ全体のカロリーは、にんじんとごぼう5kcal+衣46kcal+油66kcalで、117kcaとなるわけです。
大きな差がありますよね。このように、衣が多くつくほど吸油率は高くなります。
ちなみに、キスの天ぷらの吸油率は18%、小海老と三つ葉のかき揚げの吸油率は42%なので、やはりかき揚げのほうが油が多くなります。
海老は丸ごと食べよう!
天ぷらの定番である海老は、腰が曲がっている見た目から長寿を意味する縁起が良いものです。
栄養面で注目したい成分はタウリンです。タウリンは肝臓の機能を高め、コレステロールの吸収を抑えます。さらに、海老の殻に含まれるキチンという食物繊維にも、コレステロールの吸収を抑える働きがあり、頭や殻なども捨てずに素揚げにすることで、栄養満点の美味しいおつまみになります。
油=悪じゃない。油を摂るメリットは?
天ぷらは少し油が気になるところではありますが、油は食材の脂溶性ビタミン(脂に溶けるビタミン)の吸収を上げる働きもあります。
天ぷらの定番具材、海老やさつまいもには脂溶性のビタミンEが多く、かぼちゃやにんじんには同じく脂溶性ビタミンであるβ-カロテンが多く含まれるため、これらの栄養素の吸収が高まるというメリットがあります。
ただ、やはり天ぷらは油を摂りすぎてしまう傾向にあるため、合わせる副菜には、油や脂肪が少ない料理でバランスをとれると良いでしょう。
例えば、脂質が少なく普段不足しがちな食物繊維を摂れる副菜がおすすめです。特に食物繊維の中でも水に溶けやすい水溶性の食物繊維は、食後の血糖値の上昇を緩やかにしたり、コレステロールの上昇を抑える働きがあります。
そのため、なめこおろしやきんぴらごぼう、夏なら納豆とオクラの和え物などがおすすめ。そしてご飯は、押し麦やもち麦入りにすると水溶性の食物繊維を摂ることができます。
年末年始もできるだけバランスを意識しながら、おいしい食事ができるといいですね。
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『管理栄養士がジャッジ』は、本記事で最終回となります。長い間ご愛読いただきありがとうございました。
記事情報
参考文献
1.『調理のためのベーシックデータ第6版』女子栄養大学出版部
著者プロフィール
長 有里子(おさ・ゆりこ)
管理栄養士/sazukaru代表。
人気サイト「服部幸應先生の1週間ダイエットレシピ」の監修経歴、食と健康の総合ポータルサイト「イートスマート」立ち上げメンバー。サイトや書籍の栄養監修多数。現在はプレコンセプションケアにも力を入れている。
制作
文:長 有里子
イラスト:フクロウ