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2022.04.29

新型コロナワクチン4回目接種の必要性は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナワクチンは3回目接種が進み、4回目の接種も視野に入ってきました。実際、4回目の接種はどの程度効果があるものなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年4月13日ウェブ掲載された解説記事ですが、今後の新型コロナワクチン接種のあり方についての論説です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

4回目接種はどれくらい有効なのか

日本では今新型コロナワクチンの3回目接種が施行され、4回目接種についても実施の方向で動いているようです。

ただ、その有効性については、まだあまり明確なことが分かっていません。

この記事と同じ紙面に掲載された、イスラエルでの4回目接種の有効性データでは、3回目接種から4か月以上の間隔を置いて、60歳以上の年齢層に接種した結果として、接種後14日から30日の有症状感染の予防効果が52%、入院の予防効果が61%、重症感染の予防効果が72%、感染による死亡の抑制効果が76%となっていました。(※2)

一定の有効性は確認されるものの、当初2回接種後の有症状感染予防効果が95%を超えていたことを思えば、感染そのものを抑止する効果はあまり期待は出来ず、死亡を含めた重症化予防においてのみ、一定の有効性が確認されるという結果です。

従って、今後4回目接種を施行するとすれば、力点は感染そのものの抑制ということではなく、重症化の抑止効果を期待する点にある、ということが出来ます。

つまり、全ての住民が追加接種をするのではなく、重症化リスクの高い、持病のある方や高齢者に限って、接種をすることが効率的だという結論になる訳です。

そして、追加接種を先行的に実施にしている多くの国においても、現状はそうした対象を絞った接種が、施行されているようです。

同じワクチンを打ち続けると免疫が弱くなる可能性が

それでは、何故回数を重ねる毎に、ワクチンの有効性は減弱しているのでしょうか?

現在使用されているワクチンは、2019年に中国で流行した時点のウイルス抗原を、基本的に使用して作られています。

従って、抗原に変異が蓄積され、当初の抗原とは異なる性質を持つようになっているので、そのために有効性が低下している、という考え方が可能です。

もう1つ最近言及されることが多いのが、「抗原原罪説(original antigenic sin)」と呼ばれる考え方です。

これはある抗原の刺激を繰り返し受け、それに対する免疫応答を繰り返していると、抗原が変異した時に、それに対する免疫応答が弱くなる、という現象のことです。

これは厳密には人間では確認されている現象ではなく、猿での実験の結果ですが、現行の中国株に対するワクチンを接種していると、オミクロン株に対する免疫応答が、ワクチン未接種の場合より弱くなったという結果が報告されています。

つまり、あまり同じワクチンによる免疫刺激を繰り返していると、免疫細胞がロックをされたような状態になり、変異株に対して臨機応変に対応する力を、失ってしまうのではないか、という理屈です。

仮にこれが事実であるとすれば、現行のワクチンで4回目接種をするのは得策ではなく、現在流行している変異株に合わせたワクチンに、早急に切り替えるべきだ、ということになる訳です。

4回目接種は得策ではなさそう

いずれにしても新型コロナ感染症の流行も2年を過ぎ、その対策とその目的については、今まさに切り替えの時期に至っていることは、間違いのないことのようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36