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2021.08.26

妊娠中に新型コロナに感染すると重症化しやすい?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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妊娠すると免疫力が低下し、感染症に罹りやすくなるのは周知の事実。では、妊婦さんがコロナウイルスに罹ると、どれくらい悪化するものでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Pediatrics誌に、2021年4月22日ウェブ掲載された、妊娠中の新型コロナウイルス感染症のリスクを、比較検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

妊娠中のコロナ感染リスクとは?

妊娠中の新型コロナウイルス感染症が、母体にも胎児にも悪影響を与え、大きなリスクになるという推測は、その流行の当初から指摘はされていました。

しかし、実際には少数の感染事例のみで、そうした推測がされていただけで信頼のおける多数例の実証的な検証は、殆どされてはいませんでした。

妊娠中に感染すると、母子ともに重症化や死亡のリスクが増加

今回の疫学データは、世界18カ国の43の研究機関が協力したもので、トータル705名の妊娠中新型コロナウイルス感染事例を、1424名の感染していない妊娠女性と比較してそのリスクを検証しているものです。

その結果、妊娠中に感染した女性は感染していない女性と比較して、重症感染のリスクが3.38倍(95%CI:1.63から7.01)、集中治療室に入室するリスクが5.04倍(95%CI:3.13から8.10)、母体の死亡リスクは22.3倍(95%CI:2.88から172)、胎児についても重症の合併症や死亡のリスクを、2.14倍(95%CI:1.66から2.75)有意に増加させていました。

つまり、妊娠中の女性への新型コロナウイルス感染は、特に母体に大きな悪影響を及ぼします。最も深刻な重症化要因である、という言い方をしてもそう間違いではないと思います。

最重要なのは妊娠女性を感染から守ること

今のデルタ株主体の新型コロナウイルス急拡大を見る限り、このリスクの高い妊娠された女性を感染から守ることは、最重要のポイントの1つであることは間違いありません。多くの人が感染拡大のリスクに無責任かつ無防備になっている現状では、守るべき対象をクローズアップすることも重要な視点の1つではないかと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36