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2021.12.01

新型コロナ感染後の体調不良と感染の関係とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルスに感染すると、その後長期にわたりだるさなどの不調が続くことがあるのだそう。この不調は感染自体となにか関係があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2021年11月8日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症後の持続する体調不良と、感染との関連についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

コロナ感染後に続く不調、感染と関連があるのか

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、新たに生じることも多いことは、これまでにも多くの報告があります。

ただその名称自体も様々で、以前ご紹介したイギリスの疫学データ(※2、※3)では、COVID-19罹患後症候群という概念で、初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、これも以前ご紹介したアメリカの論文(※4、※5)では、より広く発症から21日以上持続する体調不良を、シンプルに後遺症と表現していました。

また、「long COVID」という表現が今回の論文では使用されていますが、これも最近比較的多い表現です。

ただ、実際にどれだけの症状が、新型コロナウイルスの感染それ自体と直接的な関連を持つものであるのか、と言う点については必ずしも明らかではありません。

長期に続く症状と抗体との関連を検証

今回の検証はフランスにおいて、新型コロナウイルス感染症の流行期に、35852名の住民をインターネットで募集して登録し、郵送による新型コロナウイルスの抗体検査を施行。ネットを介したアンケートによる、持続する身体症状と抗体との関連を比較検証しています。

その結果、アンケートで新型コロナウイルス感染症に罹患した、と答えたことと、その後8週間持続する体調不良の多くとの間には有意な関連が認められ、筋肉痛や全身倦怠感、頭痛、胸部痛、息切れなどの症状について、1.39から16.37倍というリスク増加が認められました。

しかし、これを新型コロナウイルス抗体陽性との関連でみると、臭いが分からなくなる無嗅覚症のリスクが、2.72倍(95%CI:1.66から4.46)有意に増加していた以外は、症状と抗体陽性との間に有意な関連は認められませんでした。

後遺症のリスクに大きな差が

これはネットのアンケートが主体のデータですし、郵送で送られた検査キットの結果が、確実に本人のものとは確認出来ないなど、問題もあるデータなので注意が必要ですが、本人の申し出と抗体価による確認とで、新型コロナ感染症の後遺症のリスクに、大きな差があるという結果は興味深く、今後新型コロナ後遺症の明確な診断基準については、より実証的な検証が必要であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36