メニュー

2021.07.08

新型コロナ、一年以内の再感染率は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

麻疹のように一度罹ると二度と罹らない病気もありますが、新型コロナは何度も罹る病気と言われています。実際の再感染率はどれくらいなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2021年5月28日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の再感染率についてのレターです。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

一年以内に新型コロナに再感染する確率は?

新型コロナウイルス感染症は、一度自然感染しても再感染自体はあり得るという事実は、ほぼ確立したものと言って良いと思います。

つまり、一生においては何度も感染します。

ただ、一度感染してしばらくの間は、再感染はしにくいということも事実です。

それでは、一度新型コロナウイルスに感染した人が、その後1年以内くらいの間に再感染する率はどのくらいでしょうか?これは色々な報告があって、必ずしも一定はしていません。

以前ご紹介したアメリカの海兵隊の新兵のデータ(※2、※3)と、デンマークの一般住民の大規模疫学データ(※4,※5)においては、感染後3か月以降で、概ね2割が再感染していて、再感染予防率が8割程度と算出されています。ただ、その大多数は軽症か無症状です。

イタリアの研究によると、一度感染すると93%の再感染を予防可能

今回のデータはイタリアのロンバルディア州において、2020年の第一波の流行期に施行された、122007件のRT-PCR検査の結果を元に、経過の追える事例を解析したものです。

一度感染してから90日以降で、RT-PCR検査が再び陽性となった事例を、再感染として定義しています。

その結果、平均で280日の観察期間において、1579名の登録時の陽性事例のうち、再感染は5例に認められ、再感染率は0.31%(95%CI:0.03~0.58)と算出されました。その多くは医療施設関連で、入院患者が1例、2例は医療機関勤務、1例は毎週輸血をしている患者で、1例は老人ホーム入所の退職者でした。

登録時は陰性であった13496名のうち、感染したのは3.9%に当たる528名でした。1日人口10万人当たり15.1件の新規感染に対して、再感染は1.0件で、これを年齢、性別、人種などの因子で補正した結果、一度感染することにより再感染は、93%(95%CI:0.06~0.08)予防されるという数値が得られました。

93%という再感染予防効果は、ほぼmRNAワクチンの有症状感染の予防効果と一致しています。

これはデンマークやアメリカ海兵隊の、80%という結果とはかなり乖離がありますが、おそらく無症状感染があまり捕捉はされていないという点や年齢による違いが解析されていない点、変異株が殆ど見つかっていない時期の解析である点、などが影響している可能性があります。

変異株によってもう少し再感染率が上がる可能性も

これまでのデータを見る限り、無症状を含めての再感染予防効果は80%程度で、変異株の性質によってはより再感染率は増加する可能性がある、というように理解しておいた方が良さそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36