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2021.09.11

新型コロナの合併症でおこる心筋梗塞や脳梗塞のリスクとは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルス感染症は「肺炎」と言うイメージがありましたが、実は血管の炎症や血栓が起きることも多いのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet誌に2021年7月29日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症と心血管疾患との、関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナの合併症である虚血性梗塞

新型コロナウイルス感染症は、当初は重症肺炎を来す病気という認識でしたが、その後全身の血管に炎症や血栓を来すような、血管の病気という認識に変わりました。

急性心筋梗塞や脳梗塞(虚血性梗塞)は、この感染症の重症化のリスク因子であると共に、この感染症の予後を左右する重要な合併症でもあるのです。

感染すると心筋梗塞と脳梗塞のリスクが増加

今回の検証はスウェーデンにおいて、86742名の新型コロナウイルス感染症の患者を、感染前後とそれ以外の時期との比較で検証した方法と、348481名の感染していないコントロールと比較した方法とで、感染から4週間程度の期間における心筋梗塞と脳梗塞の発症リスクを比較検証しているものです。

検証期間はまた、感染症状出現当日を含む場合と、含まない場合とに分けて解析を行なっています。

その全ての検証において、新型コロナウイルス発症から特に2週間の間で、心筋梗塞と脳梗塞の両者の発症リスクは有意に増加していました。

複雑になるので1解析パターンのみ示しますが、コントロール群との比較で発症当日を含んだ場合、急性心筋梗塞の発症リスクは6.61倍(95%CI:3.56から12.20)、脳梗塞の発症リスクは6.74倍(95%CI:3.71から12.20)、感染発症後2週間で有意に増加していました。

発症から4週間は合併症にもご注意を

このように、新型コロナウイルス感染症発症から4週間くらいの時期は、心筋梗塞や脳梗塞の新規発症が明確に増加しており、それが感染症自体の予後にも大きな影響を与えています。

従って、その治療には感染そのもののコントロールと共に、併発する心筋梗塞や脳梗塞への対応も同時に行なってゆく必要があるのです。この感染症の厄介さは、こうしたところにもあるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36