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2021.06.07

胃の検査は何を選ぶ?バリウムと胃カメラの押さえておきたいポイント

kencom公式ライター:松本まや

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年度初めのバタつきが収まりつつある中、そろそろ年1回の健康診断を受けるという人も多いのではないでしょうか。

毎年なんとなく受けてしまうものの、実際はどんな検査なのか、よく分からないこともあるかもしれません。中でもどう選べばよいのか分からないバリウム検査と胃カメラ検査の違いについて、kencom監修医師である石原藤樹先生に、分かりやすく解説いただきました。

胃X線検査(バリウム検査)と胃カメラ検査の違いって?

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健康診断で実施するバリウム検査や胃カメラ検査(内視鏡検査)の目的は、その名の通り、胃の疾患の早期発見です。同じ用途で使われることの多い検査で、どちらかを自身で選択できるような場合もありますが、結局のところどう違うのでしょうか。

「バリウム検査」とは

「バリウム検査」は、正式には「胃X線検査」と呼ばれます。バリウムという胃部造影剤と、胃を膨らませる発泡剤を飲み、回転しながら胃全体を撮影する検査です。バリウムが食道や胃を流れる動きをX線検査によって追うことができるため、上部消化器管が狭くなっていないか、粘膜に凹凸がないかなどの異常をチェックすることができます。

胃がんのほか、粘膜の状態から、胃潰瘍や胃炎、ポリープなどの疾患を早期発見するために行います。

胃カメラと比べて安価で実施可能で、現在健康診断でも広く取り扱われていますが、健康被害はほとんどないとされているものの、放射線の一種であるX線による被ばくがあることがデメリットのひとつです。

「胃カメラ検査」とは

内視鏡検査、いわゆる「胃カメラ検査」とは、口または鼻から細い内視鏡を通し、異常がないか、胃の粘膜の状態を肉眼で観察する検査です。直接胃の粘膜を観察できるため、バリウム検査と比較して検査性が高いと言われます。
また生体検査を行うための組織を、胃粘膜の観察と同時に採取できるのもメリットです。

一方で医師が実施する必要があるためバリウム検査と比べてコストがかかり、「胃カメラはつらい」というイメージがある通り、検査中に苦しいと感じたり、検査後に気持ちが悪くなったりする人もいます。

カメラを通すのは喉と鼻、どちらが良い?

喉から通す経口内視鏡を使った胃カメラ検査は苦しいと感じる人もいるため、より細い管を鼻から通す経鼻検査も選択可能です。具体的な症状がない場合のスクリーニング検査としては経鼻内視鏡で十分ですが、経口内視鏡の方が機能性は高く、多様な用途に使うことができます。花粉症で鼻づまりのあるときなど、経鼻内視鏡が使えない場合もあるので、どちらを選択するかは医師とよく相談しましょう。

より簡便にリスク判断可能な検査も

近年ではより簡易的に、血液検査によって胃粘膜の状態を検査できる「胃がんリスク検査(ABC検査)」も増加しています。
この検査では、胃や十二指腸潰瘍の主な原因と考えられているヘリコバクター・ピロリ菌の抗体価検査や胃粘膜萎縮のペプシノゲン検査を行って、胃がんリスクをABCの3群に分類します。
胃がんそのものを発見できるわけではありませんが、胃の状態を知るために有効です。

医師が勧める検査方法とは

胃カメラとバリウム、どちらがおすすめ?

一般的には実際に粘膜を観察できる胃カメラ検査の方が精密で、初期の病変をより発見しやすいと言われています。一方で、バリウム検査では胃の形状が観察できるため、初期段階で粘膜上に異変が現れにくい病気の場合には、胃カメラ検査では発見できない病気を見つけられることがあります。
それぞれメリットもデメリットもあり、一概には言い切れません。異常が見つかっていないうちは、異常を見逃さないため、それぞれを交互に受け続けていくことも一案です。

20代だからといって安心せず、早めのリスク判断を

一般的に35歳を超えると健康診断でバリウム検査や胃カメラ検査を行うようになりますが、実は胃がんのリスクは人それぞれ。一概に20代は安全とも言い切れません。

胃がんの多くは、胃の炎症が続くことによって粘膜が萎縮する「萎縮性胃炎」が原因です。これは少しずつ進行するため、早い段階で一度内視鏡検査を受けておくことで、自身の胃の状態、胃がんのリスクが確認できます。
20代でも一度胃の状態を確認しておき、ピロリ菌への感染や家族歴などの要素も加味して、リスクが低いと判断できればその後は2年に1度、リスクが高そうであれば毎年受診するなど、ご自身に合った頻度での検査を検討してはいかがでしょうか。

石原 藤樹(いしはら・ふじき)先生

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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