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2020.07.15

「マスク肌荒れ」を解決!皮膚科医が教える正しい対処法とは【マスクと肌荒れ・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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休校や在宅勤務が終わり、長時間にわたりマスクを着ける機会が増え、「マスク肌荒れ」に悩む人が増えています。感染症対策をしっかりとしながら肌荒れを防ぐには、どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。国立国際医療研究センター 皮膚科医長の玉木 毅先生に聞きました。

玉木 毅(たまき・たけし)先生

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国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 皮膚科診療科長 
1987年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部皮膚科教室入局。米国サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科医局長、同分院皮膚科講師などを経て現職。医学博士、日本皮膚科学会東京支部運営委員、東京都皮膚科医会副会長、東京大学非常勤講師。

マスクによる肌荒れはなぜ起こる?

感染症対策のためのマスクは通常、ウイルスなどを含んだ飛沫を通さない構造になっているため、通気性が悪く、マスクの中は高温多湿になりがちです。その結果、マスクの下の肌は蒸れ、雑菌が繁殖しやすい環境になっていて肌トラブルを引き起こしやすくなるのです。その上、表情や口の動きに伴って起こるマスクと肌との摩擦が物理的刺激になり、肌のバリア機能が悪化することがあります。

気がついていない人もいますが、最近でき始めたあご周りの小さなブツブツや、かゆみ、ニキビ、湿疹などは、マスクが原因になっている可能性も。これから気温が上がると、更にマスクの中の環境は悪くなるので早めの対策が必要です。

「蒸れ」が湿疹、あせもに

マスクによるあせもは、マスク下の肌が常に高温多湿の環境に晒されることで、汗孔(汗の出口)からうまく汗が排出できなくなって管がつまり、肌内部に溜まった汗が水ぶくれや炎症を引き起こすために起こります。皮膚の表面近くに汗がたまる水晶様汗疹(白いあせも)と、皮膚の深いところに汗がたまる紅色汗疹(赤いあせも)の2つのタイプがありますが、紅色汗疹の場合は、強いかゆみのほかに、チクチク、ヒリヒリした痛みを感じる時もあります。

また、肌の角層のバリア機能が低下しているので、通常は刺激にならない物質でも炎症が生じてしまうため、赤みや痒み、小さなブツブツの湿疹ができます。

ニキビは擦れることで、悪化する

もともとあったニキビが悪化したり、口のまわりやあご、鼻のまわりなどに新たにニキビや肌荒れを起こしてしまう人もいます。
これは、マスクとの擦れによって毛穴の入り口が詰まり、皮脂が溜まってしまうからです。また、マスク内の高温多湿の環境は、ニキビを起こすアクネ菌が増殖するには最高の環境と言えます。

「マスク肌荒れ」にはこう対処!!トラブル解決TIPS

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肌には最悪な環境と言えるのがマスク生活です。しかもあせもやニキビなどの肌荒れは、早めに正しいケアをしないと治りにくくなり、慢性化してしまいます。

では「マスク肌荒れ」を防ぐにはどのように対策をしていけば良いのでしょうか?まずは、正しいマスクの使い方TIPSです!

①マスクの素材を変えてみよう

残念ながら、万人の肌に良いと言えるマスクはありません。
不織布のような紙マスクは気密性が高いので、感染症予防という意味では優れていますが、その分蒸れやすく、肌が荒れたり、かゆみを感じたりする方が多いのも事実。一方、柔らかいガーゼや綿などの素材は、擦れが少なく、目が粗いので通気性はよくなります。

今は、ウイルスを周りに拡散させないという意味合いでマスクを選んで良いので、通気性がよく着け心地が良いと感じられる素材を試してみると肌に合うマスクが見つかるかもしれません。今後各メーカーから「夏用のマスク」も販売されていくようなので、検討してみるのも良いでしょう。

②マスクの正しいつけ方を確認

マスクを正しく着けていないために、肌トラブルを起こしている方がいます。
不織布のマスクは、一般的に肌に直接触れる部分は肌に優しい柔らかい素材、外側は水を弾くような素材が使われています。それを、表裏逆に着けてしまうと、マスク内は余計に蒸れる上、肌への刺激も大きくなるのは当然です。白い不織布マスクは間違えやすいので、注意しましょう。
また、ノーズワイヤーが入ったタイプのマスクは、しっかりと顔の形に合わせてフィットさせることで、肌との擦れが軽減されます。ただし、定期的にマスクを外して肌とマスクを乾燥させることを忘れずに。

耳の皮膚が荒れる人もいらっしゃいます。圧迫が強いと摩擦も大きくなるので、顔の大きさに合った適切なサイズを選び、ゴム部分が短すぎないようにしましょう。

③「ワセリン」で保護膜を作る

マスクとの擦れが気になる場合は、ワセリンなどをマスクが当たる頬や鼻、ゴムがあたる耳などに薄く塗っておくことも効果的です。肌表面に保護膜を作り、刺激から守ってくれます。ただし、厚塗りは厳禁!汗孔や毛穴を塞いでしまうと逆に肌荒れにつながるので、「薄い保護膜」を作るイメージで塗りましょう。

④こまめにマスクを外して乾燥させる

定期的にマスクを外して、マスクと肌の蒸れを逃してあげると、炎症の悪化が抑えられます。マスクを着け続けていると、息の中の水分がマスク内に溜まり、目が詰まってしまうので、余計に息苦しく、湿気がますます篭ります。マスクも、皮膚も高温多湿の状況から解放させて、休ませてあげることが大切です。

周りに人がいない時やソーシャルディスタンスが取れる安全な場所では、マスクを適宜外しましょう。

⑤マスクを清潔に保つ

マスク使用後は、マスクの表面に触れないようヒモを持って外し、洗濯(もしくは破棄)しましょう。これは、感染症対策にもなりますが、肌荒れ対策にもなります。マスクの内側は雑菌が繁殖しやすい環境の上、顔の皮膚からの汚れがついています。紙マスクの場合は毎日破棄をし、洗えるマスクの場合は、洗剤で押し洗いをするか、洗濯機に対応しているものなら、ネットなどに入れて洗濯機で汚れを落としましょう。しっかりと乾燥させることも大切です。

要チェック!マスクをしながら肌を健康に保つスキンケア法

感染症予防にマスクは有効ですが、着け続けることで肌へのトラブルが起こりやすいことが判ったのではないでしょうか。
後半では、マスク肌荒れの悩みを改善&未然に防ぐ、玉木先生直伝のスキンケア方法をお伝えします!

▼後半の記事はこちら

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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