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2018.03.07

外ではマスク、家では空気清浄機・加湿器で花粉を入れない!春の花粉症講座〜対策編

KenCoM公式ライター:黒田創

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3月に入り、毎日鼻水、くしゃみ、目の痒みなど花粉症の症状に悩まされている方が多いのではないでしょうか。日本気象協会のサイト(tenki.jp)内の花粉飛散予測によると、日本列島を南から北へと上がっていくスギ花粉最前線は3月1日時点で東北地方南部まで到達しており、ほぼ全国的に花粉症シーズン到来と言える状況です。

多くの方が気になる今年の飛散状況、そして花粉症の対処法と予防法について、今回も日本医科大学大学院・耳鼻咽喉科学講座主任教授の大久保公裕先生にお話を伺いました。

■花粉症の基礎を学べる前回の記事はこちら

2018年の花粉飛散状況は?

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2018年春の花粉の飛散量は、多くの地域で前年の飛散量を上回ると予想されています。東京では2月14日にスギ花粉の飛散開始が確認されました(東京都発表)。これは昨年より3日、平年より2日程度遅れていますが、ヒノキも合わせた東京の花粉の飛散量は昨年と比較して1.5倍以上。「非常に多い」予想となっています。

他の地域を見ますと、西日本や九州は「平年並み」、もしくは「やや少ない」や「少ない」県が多め。
逆に東日本は全体的に多めの予想となっており、十分警戒が必要です。

日本気象協会, 2018-2-15, 2018年 春の花粉飛散予測(第4報), https://tenki.jp/pollen/expectation/を一部改変

日本気象協会, 2018-2-15, 2018年 春の花粉飛散予測(第4報), https://tenki.jp/pollen/expectation/を一部改変

花粉の飛散が始まると、その1~2週間後あたりから飛散量がどんどん増えていきます。さらに、晴れて気温が上がる日や空気が乾いて風が強く吹く日、雨上がりの翌日は花粉が大量に飛びますので、より万全の対策をとりましょう。

スギ花粉のピークは地域によって異なりますが、福岡では3月上旬頃まで。広島や大阪、名古屋は3月上旬~中旬。東京は3月上旬から4月上旬まで続き、金沢や仙台では3月中旬~下旬となります。
なかでも東京は、花粉のピーク期間が非常に長い地域なのです。

スギ花粉のピークが過ぎると、今度はヒノキ花粉のピークが始まります。こちらは4月中旬~下旬まで続きますので、ヒノキ花粉にもアレルギー反応が出る方にとっては、もうしばらく気を抜く暇がありません。

日本気象協会, 2018-2-15, 2018年 春の花粉飛散予測(第4報), https://tenki.jp/pollen/expectation/を一部改変

日本気象協会, 2018-2-15, 2018年 春の花粉飛散予測(第4報), https://tenki.jp/pollen/expectation/を一部改変

辛い花粉症。まずは薬物治療を

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花粉症の症状に毎年苦しめられている人は、スギ花粉が飛び始める前、1月下旬~2月上旬頃から薬物治療を始めることをおすすめします。このタイミングで投薬を開始すれば、対処療法ではありますが症状はかなり軽減できるのです。今年はすでに多くの地域が花粉症シーズンに入っていますが、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目の痒みや充血、口の乾きや倦怠感などの辛い症状が現れたら今からでも遅くはないので、なるべく早いタイミングで薬物治療を始め、症状を緩和させましょう。

中には症状がひどくなっても花粉症であることを認めようとせず、治療を怠る人もいますが、前回もお話ししたように花粉症の症状は生活全体の質を下げ、仕事のパフォーマンスも落としてしまいます。現在のところ症状を和らげるには薬物治療がベターな選択。意地を張らずに一度治療を受けてみてください。

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花粉症の症状を抑える薬はいろいろありますが、私の場合はアレルギー治療薬の一種、抗ヒスタミン薬をオススメしています。
体内に入った花粉の刺激でアレルギー反応が起こると、肥満細胞から化学物質のヒスタミンが分泌され、ヒスタミン受容体と結合してさまざまなアレルギー症状を誘発します。抗ヒスタミン剤はヒスタミンと受容体の結合を遮断する力があるため、投薬するとアレルギー症状が軽減するのです。抗ヒスタミン薬にはビラスチンやデスロラタジン、ルパタジンなどいくつかの種類があります。

花粉を取り込まない環境作りを

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薬物治療だけではなく、環境面も大事な花粉症対策。まずこの時期は、花粉を取り込まないことを第一に考えましょう。具体的には屋外では必ずマスクや眼鏡を着用すること。ドラッグストアやスーパーにはさまざまな種類の花粉症用マスクが並んでいますし、花粉をシャットアウトするゴーグルもありますので、外出時には忘れずに着用してください。

一般的に室内の花粉の量は外に比べて大分少なく、100分の1程度。なので外出時についた花粉を持ち込まないよう、建物内に入る時は上着や靴、頭などについた花粉を払うよう心がけましょう。そのうえで手洗い、うがいをしっかり行うこと。それでも花粉が完全に取り除ける訳ではないので、室内においても対策が必要です。

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一年を通して家の中で空気清浄機を使っている方も多いと思いますが、特にこの時期は人の動きの多いリビングに置いてください。人の動きで空気が動くと花粉が舞い上がるため、口や鼻から体内に入ってしまう。清浄機があればそうなる前に吸い取ってくれるのです。

一方、人の動きが比較的少ない寝室はたとえ花粉があっても舞い上がる機会が少ないため、清浄機があってもあまり効果を発揮しません。寝室には加湿器を置いて、床に落ちている花粉に湿気を与え、人の動きがあっても飛散しにくい状況にするといいでしょう。その際は加湿機能付きの空気清浄機ではなく、ちゃんとした加湿器を使ってください。清浄機の加湿機能は概してパワーが不足しがちです。

シーズンが過ぎても対策を!

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないですが、花粉症シーズンが去ると症状の辛さも忘れてしまうもの。ですが、この春花粉症に苦しんだ人は今のうちに来シーズンの対策を考えておきましょう。

前述したように花粉の飛散が始まる前から薬物治療を行うのもいいですが、舌下免疫療法などで完治を目指すのも有効な方法。これは1日1回、少量のアレルゲンを摂取することで花粉症を根本から断つ治療法ですが、症状が大幅に改善したケースも多いです。

次の花粉シーズンが始まる前に治療を始める必要がありますので、辛い記憶が残っている間に医師に相談するといいでしょう。
花粉症シーズンは辛いものですが、ここに挙げたような予防法や対処法を知っておけば症状をかなり緩和することができます。3月、4月も他の時期と変わらず健康的な生活を送りましょう。

大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)先生

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1959年生まれ。日本医科大学大学院卒業。2010年から同大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学分野教授となり、現在は耳鼻咽喉科学講座主任教授および附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長も兼任。また日本アレルギー学会理事、日本耳鼻咽喉科学会代議員など学会活動にも従事している。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆中。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。