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2019.05.01

腕立て伏せができると心血管疾患リスクが低下する?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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健康維持には欠かせない筋力アップのトレーニング。これには、病気の予防効果もありそうです。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のJAMA Network Open誌に掲載された、腕立て伏せの出来る回数とその後の健康との関係を検証した、ちょっと面白い論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

筋力不足は、心血管疾患の危険因子になる?

心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の危険因子としては、高血圧や糖尿病、喫煙などが有名ですが、筋力などの基礎体力も重要な要素であるという指摘もあります。

以前ご紹介した論文では、握力の数値が生命予後や心血管疾患のリスクと、関連しているという報告もありました。(※2 ※3)

腕立て伏せができるほど、心血管疾患の発症リスクが低下

今回の研究はアメリカ、インディアナ州で、18歳以上の男性消防士、1562名を対象として、そのうちの1104名の腕立て伏せの可能回数を、その基礎体力の指標として登録時に測定し、10年間の経過観察を行なっています。

その結果、経過観察期間中に37件の心血管疾患が発症し、腕立て伏せの可能回数が多いほど、心血管疾患の発症リスクが低くなる、という関連が認められました。

腕立て伏せの可能回数を5つに分けた解析では、10回未満と比較して、40回以上可能であった群では、心血管疾患のリスクが96%(95%CI: 0.01から0.36)有意に低下していました。

筋力と心血管疾患予後には関係がありそう

これは消防士さんのデータで、比較的若い人が主体なので、実際に発症した病気の事例も少なく、一般の方にそのまま当て嵌まる知見ではありませんが、簡単に測定可能な体力の指標が、ここまで大きく心血管疾患の予後に関連している、という結果は大変興味深く、今後より幅広い対象者において、同様の検証が行われることを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36