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2019.04.24

男女の脳年齢には差があるか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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「男脳」「女脳」などという言葉がありますが、男女の脳機能には差があるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)誌に掲載された、脳の代謝機能から見た性差を検証した論文です。

脳の機能には性差がある?

脳の機能に性差があって、それが脳の病気の性差に繋がっているのではないか、というような話は以前からあります。
また、より一般的には、男女脳のようなものがあって、それが男女の理解の難しさの要因となっている、というような内容の本が売れたこともありました。

ただ、これまでに脳の男女差を見た多くの研究は、年齢をマッチングさせた男と女を比較したもので、加齢による影響が考慮されていませんでした。

脳の男女差を比較検討したところ、女性のほうが脳年齢が若かった

そこで今回の検証では、PET検査によって測定された脳細胞のブドウ糖の取り込みや代謝能が、年齢と共に低下することを利用して、性別毎の脳年齢を推定し、脳年齢の男女差を比較検証しています。

その結果、108名の女性と76名の男性の検証において、男女の脳年齢には有意な差があり、平均で3.8歳男性より女性が若い、というデータが得られました。そして、この性差は20歳代において既に認められていて、この男女の脳年齢の差は、思春期には既に決定されていることも示唆されたのです。

この結果は、今後認知症の経過等にもつながるかも

これは現状は他愛のないトリビアの域を、出ないものではないかと思いますが、脳代謝に性差があり加齢による変化が異なるという知見は、認知症の経過などにも繋がる可能性があり、今後意外に臨床的に重要なものとなるかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36