2018.04.15
苦手な上司からの要求…好感度を上げる断り方とは?【働く人のポジトレ#3】
働く社会人たちの強い味方!数々の心理テクニックを熟知する心理学者の内藤誼人(ないよう・よしひと)先生が、ストレスにさらされている働く人たちの悩みを解決に導く本連載『働く人のポジティブメンタルトレーニング』、略して「ポジトレ」。
今週は、「苦手な上司からの要求をうまく断る方法」。早速お悩みを紹介していきます。
今週のお悩みはコレ
■お悩み
「苦手な上司からの要求がストレスです。なるべく距離を置きたいのですが、避けられたくもなくて……どうしたらバランスのいい立場にいられますか?」
内藤先生:「交渉上手になりましょう!なれますから」
上司の要求に対して、Yes/Noで答えるのではなく、自分の気持ちに沿った“交渉”を加えて別の結果に導こうということです。交渉のメリットは精神的なストレスを緩和できることにもあります。
それによって条件を変えられる可能性があるとわかれば、精神的に追い詰められることなく、これまでよりリラックスして仕事に臨めますよ!
また、できない奴というレッテルを貼られずに、自分の動きたいように動けるようになっていくのです。すごくないですか!?
苦手な人からの要求は無条件にストレスが溜まるでしょ?
例えば、上司からの突然の無茶ぶりで「今週末までにプレゼン資料を作るように!」と言われても、「はい!」と二つ返事で引き受けるのは、間違いなくいい部下でしょう。そして、受ける部下の側としても、その要求に一切の不満がなければ問題はありません。
ただ、今回のご相談者さんのように“上司が苦手”という間柄なら、「そんな急に言われても……」「中身が固まってないのに……」「なんで僕が(私が)……」といった不満の想いが芽生えることが多いはず。
それをそのまま口に出すのは社会人としてNGですが、口をつぐんで引き受けるのも精神衛生的にNGなのです。
不満は“交渉”に変えてみよう!
上司の指示に不満を感じたときの返事は、「肯定」+「交渉」で決まりです!
■例①
「(肯定)承知しました!(交渉)ただ別の案件が佳境でして、資料の提出は週明けではいかがでしょうか?」
■例②
「(肯定)わかりました。(交渉)なお、この案件は僕よりも○○さんが詳しく、彼に大枠を製作してもらうのがベストだと思うのですが、構わないでしょうか?」
これです!
肯定してから交渉することによって、相手の顔に泥を塗ることなく、自分の心に受けるストレスも大きく減らせるんです。
上司は交渉してくる部下に悪印象は持っていません
意外にも、世の中の多くの上司は“交渉してくる部下に悪印象は持っていない”というのは、研究結果でも明らかになっているんです!
ノースカロライナ大学のベネット・テッパーという方が、部下を持つ347名のビジネスパーソンに対して、“どのような部下が好みか”を調査しています。
自分の要求に対してNoを突きつける部下の好感度は最悪という結果。しかし、Noとは言わずに、条件の変更や新たな提案を加えて受け入れる部下は、好感度が高かったのです。
交渉は自分の意見の表明でもあり、コミュニケーションを図ろうという姿勢が評価されているのでしょう。
まずは小さなことから交渉してみましょう
交渉をした経験がない人にとって、最初は勇気がいることかもしれません。しかし、自分の希望を言葉にして交渉する権利は、誰にでもあります。
「今週末までにプレゼン資料を急ピッチで仕上げます。これがうまくいったら褒めてくださいね」というような、ささやかな交渉から始めてみるのは、いかがでしょうか?
(取材・文/横山博之)
参考文献
Tepper, B. J., Uhl-Bien.M., Kohut, G. F., Rogelberg, S. G., Lockhart, D. E., & Ensley, M. D. 2006 Subordinates' resistance and managers' evaluations of subordinates' performance. Journal of Management ,32, 185-209.
監修者プロフィール
■内藤誼人(ないとう・よしひと)先生
心理学者。立正大学講師。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。心理学者として執筆や、メディア出演、企業講演などで活躍中。執筆した著書には『すごい!モテ方』(廣済堂出版)『ビビらない技法 やさしいあなたが打たれ強くなる心理術』(大和書房)など多数。歯に衣着せぬ巧みなトークで周囲を明るくしてくれる。
著者プロフィール
■横山博之(よこやま・ひろゆき)
『monoMAX』、『東洋経済』などの雑誌やWeb、書籍など幅広いフィールドで活躍するフリーライター。多くの著名人のインタビューを手掛けてきた経験から、内藤先生とタッグを組み、先生の書籍を執筆をした経験も。時計やカバン、文具といった男性たちがこよなく愛するガジェットにも造詣が深い。