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2016.08.26

【津下先生のメタボの本質⑤:自動調節】血糖を一定範囲に守ってくれるホルモンの働き

津下一代

食事を取ることはホルモンにとっては一大事。上がりすぎても下がりすぎても危険な血糖をホルモンは一定に保ってくれます。その働きをご存知でしょうか?
糖尿病・肥満を専門とし、厚生労働省における「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定にも携わる、あいち健康の森健康科学総合センター・センター長 津下一代先生が、メタボに悩むあなたに知ってほしい基礎知識をわかりやすくご紹介する連載記事です。

すい臓だけでなく、小腸など消化管も、血糖を一定に保ってくれている

夏にお世話になるエアコン。冷えすぎたり、暑すぎたりするのが難点でしたが、最近は微妙な温度調整ができるほか、湿度や日光、人の居場所をセンサーがとらえ、気流の強さや方向を調節する機種が登場。絶えずデータをとり、省エネで快適な室温にしてくれます。

同じように私たちの体も常にデータをとり、ホルモンの分泌量を変化させて、生体の機能を調節しています。おかげで外界の変化があっても、安定した状態を保つことができます。

例えば血糖。上がりすぎても下がりすぎても、脳に障害を与え、血管に負担をかけるので危険です。膵臓(すいぞう)の細胞は常に血糖を監視し、上がり始めるとインスリンを分泌して血糖を下げ、下がりすぎるとグルカゴンを分泌して血糖を上げて、一定の範囲内で安定化させています。

小腸など消化管も血糖調節を手伝っています。炭水化物や脂肪などが小腸に入ると、インクレチンというホルモンを分泌、インスリンを増やしてグルカゴンを抑えます。「食事が来たよ、そろそろ血糖が上がるから準備して!」というシグナルを出しているのです。食事をとることはホルモンにとって一大事。数多くのホルモンや肝臓、筋肉も総動員して、血糖を守ってくれています。

<著者プロフィール>

■津下一代(つした・かずよ):
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務、12年あいち健康の森健康科学総合センター、23年より同センター長兼あいち介護予防支援センター長(現職)。医学博士、日本糖尿病学会専門医・糖尿病療養指導医、日本体育協会公認スポーツドクターなどの資格をもち、糖尿病、肥満、スポーツ医学の専門医として活躍。日本肥満学会理事、日本人間ドック学会理事、厚生労働省にて日本健康会議実行委員会委員をつとめ、「標準的な健診・保健指導プログラム」や「運動指針」等の策定に携わる。主な著書に「しなやか血管いきいき血液―健康寿命をのばすために知っておきたい65のはなし」「図解 相手の心に届く保健指導のコツ―行動変容につながる生活習慣改善支援10のポイント」など。その他、「NHKきょうの健康 コレステロール・中性脂肪対策のごちそう術」の監修も務める。

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