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2023.07.21

コーヒーは大腸がん予防に役立つのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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健康効果が高いとして近年人気が高まっているコーヒー。どうやら癌の予防にも一役買ってくれそうです。

今回ご紹介するのは、Techniques in Coloproctology誌に、2023年5月2日ウェブ掲載された、コーヒーと大腸癌リスクとの関連についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

コーヒーと癌リスクの関係は?

コーヒーを1日3から4杯くらい飲むことが、心血管疾患や糖尿病、脂質異常症などのリスクを下げ、生命予後にも良い影響を与えることは、これまでの多くの精度の高い疫学データにより、ほぼ確立された事実です。

ただ、それではどんな病気にも、コーヒーは予防的に働くのかと言うと、勿論そうしたことが証明されているという訳ではありません。

癌の発症リスクについては、まだコーヒーの健康効果が認められる前に、コーヒーを多く飲む人では膀胱癌が多い、という複数のデータが報告されています。

その一方でトータルな癌のリスクはコーヒーを飲む人の方が低い、という報告も複数あり、また肝臓癌については、コーヒーの予防効果を期待させるような結果が、これも複数報告されています。

コーヒーと癌リスクについての関連は、まだクリアになっているとは言えないのです。

コーヒーが癌リスクを下げる場合もあれば、上げる場合もある

2020年のBMC Cancer誌に掲載されたアンブレラレビューの論文では、肝臓癌と子宮体癌では発症リスクの低下が認められた一方、膀胱癌と小児の急性リンパ性白血病では、若干のリスク増加が指摘されています。(※2)

大腸癌とコーヒーとの関連についても、複数の報告があり、概ねコーヒーの予防効果が報告されています。ただ、その低下効果は様々で、一定の結論が得られていません。

コーヒーと大腸癌との関連を検証

そこで今回の研究では、これまでの臨床データや疫学データを、まとめて解析したメタ解析の複数の論文を、更にまとめて解析する、アンブレラレビューと呼ばれる手法により、これまでの「集合知」として、コーヒーと大腸癌との関連を検証しています。

これまでの14のシステマティックレビューを、まとめて解析した結果として、そのうちの5件のレビューで、コーヒー摂取により大腸癌のリスクは11から24%低下し、2件のレビューで結腸癌リスクが9から21%、1件のレビューで直腸癌リスクが25%低下していました。

あるレビューでは、1日6杯以上のコーヒーで大腸癌のリスクは7%、別のレビューでは、1日5杯で8%、6杯で12%の低下が認められていました。

デカフェのコーヒーについては、3件のレビューにおいてコーヒーを飲む習慣による、大腸癌リスクの低下が認められました。

1日5杯以上のコーヒーなら効果がありそう

このように、主にカフェインを含むコーヒーを飲む習慣と、大腸癌リスクの低下との間には一定の関連が認められました。

そのリスク低下は、たとえば心血管疾患などの予防効果と比較すると、より多い1日5杯以上で認められていて、デカフェのコーヒーでも有効な可能性はあるものの、カフェイン入りのコーヒーほど明確とは言えませんでした。

ただ、カフェインを含むコーヒーを多く飲むことは、健康への害もないとは言えません。

癌の予防のためにコーヒーを沢山飲むことは、現時点ではお勧め出来ませのでご注意下さい。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36