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2023.04.11

【トレイルランニング】UTMF2023攻略ポイント徹底解説!コースの特徴や装備・補給食の選び方は?

RuntripMagazine

4月に開催される『UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)』は、トレイルランナーにとって誰もが憧れる日本最高峰の100マイルレース。富士山の周りを約165km走るレースは、距離やコースはもちろん、選手によっては2回の夜を過ごす過酷なレースとなります。

そこで本記事では、同レース完走経験を持つトレイルランニング専門店『Trippers(トリッパーズ)』店長・朝長拓也さんがスポーツMCの岡田拓海さんとともにUTMFの攻略ポイントをいくつかの視点から徹底解説します。

日本最大級の100マイルレース「UTMF」

岡田:今回はUTMFの攻略ポイント、そして必要になる装備等について話していきたいと思います。ぜひ今回初めて出場するという方や、これから100マイルに挑戦したいと思っている方には参考にしていただきたいと思います。まずはこのUTMFについて簡単に紹介してください。

朝長:このレースは富士山の周りを走る100マイルのトレイルランニングレースになります。総距離が165.3km、累積標高が7574mになります。他の100マイルレースと比べるとロード率が少し高めと言われますが、トレイルもしっかりと走る過酷なレースになります。

岡田:日本の100マイルトレイルレースとしては最もメジャーで、このレースを目指しているランナーも多いですよね。

朝長:参加人数も2,400名と国内最大の規模ですし、テレビでも取り上げられて認知度も上がっていて、これをきっかけにトレランを始めたという方もいますね。

オーバーペースは厳禁!?前半はウォーミングアップの気持ちで!

岡田:まずはコースから見ていきましょう。

朝長:距離は約165kmと長いのは間違いないですが、ポイントがいくつかあります。スタートから30kmはなだらかに下っていく林道です。スタートしてテンションが上がって結構速めのペースで行っちゃうんですけど、30kmが終わってもまだ135km残っているんです。

岡田:当たり前ですけど、まだまだ先は長いですね。

朝長:それが意外と忘れがちになってしまいます。まずは、この区間をオーバーペースにならないことを意識して欲しいですね。

岡田:かんたんなことのようですが、かなり重要なポイントですね。そこを終えるとどんなコースになるんでしょうか。

朝長:ここからは天子山地に入ります。結構ハードな上りです。でも、ここもまだ頑張り過ぎないことが大事です。

岡田:頑張り過ぎないっていうのが、やってみるととても難しそうですね。

朝長:天子山地を下ってからは細かい山が続き、ロード区間もあります。ロードは走らないといけないですけど、ここもまだ半分にもきていないので焦らずに行くことが重要です。まずはドロップバッグが置ける95kmの富士急ハイランドまではウォーミングアップのつもりでいきましょう。

岡田:95kmまでがウォーミングアップは長くないですか(笑)。

朝長:長いんですけど、ここまでいかにダメージが少なくいけるかがポイントです。

岡田:ここまでいければ残り70kmくらい。後半に向けて体力を残せるか、脚のダメージを抑えられるかですね。

朝長:後半の約70kmも非常に険しいコースです。

岡田:後半の方がコンデションも含めて厳しいコースですね。

朝長:だからこそ前半はなるべく抑えていくことがポイントになると思います。富士急ではドロップバッグがあるのでしっかり準備を整えて、仮眠をとっても良いと思いますし、着替えたりして後半へ準備を整えて欲しいと思います。

岡田:ここでしっかり気分も変えたいところですね。

朝長:後半は忍野を越えて、山中湖きららに向かいます。そしてここからがまた過酷です。

岡田:後半もきつそうですね。

朝長:きららから二十曲までの間に石割山があるんですが、ここはみんながきついと言う場所です。コースの高低図には載っていないんですけど、実は隠れた難所です。

岡田:そんな隠れボスみたいのがいるんですか。

朝長:130km地点くらいで結構疲労もあるポイントなので、ここは注意しておいたほうが良いですね。その後杓子山があって、次に霜山の上りも長いんですよね。残り10kmくらいなのになかなか着かないみたいな感じで精神的にも追い込まれるポイントです。

岡田:後半も過酷だからこそ、やはり前半のマネジメントも大事になってきますよね。マップにはドロップバッグのポイントや仮眠ができる所など書いてありますね。

朝長:はい。これは事前にしっかく確認して欲しいと思います。

岡田:制限時間は44時間15分~45時間(ウェーブごとに異なる)で余裕があるので、しっかり戦略を立てることが大事になってきそうですね。

朝長:この大会に出るために他の大会でポイントを貯めてきたランナーたちなので、つぶれずにしっかり動き続けていければ完走はできる設定。場合によっては仮眠をすることも大事ですが、2022年大会に続いて今大会も毛布の貸出がないので、仮眠する場合はその方法も考えておいた方が良いですね。

あらゆる天候を想定したウェアリングを用意する

岡田:では、次に装備について聞いていきたいと思います。

朝長:まずは必携品です。公式の必携装備の注意事項にもありますが、自分で長時間身を守る状況になっても大丈夫なようにしなければなりません。そのため、現時点で何が必要かというのは正直難しいところです。

岡田:備えておくということが大切ですよね。

朝長:万が一の状況を想像して「これで大丈夫かな」と考えて、レギュレーションを通るかどうかではなく、もし気温が低い山中に3時間くらい待機しなくてはいけなくなった時、自分の身を守れるかを考えないといけません。仮に雪が降ったときでも耐えられるのかとか、いろいろと想定しないといけません。

岡田:4月の富士山の周りは気温差が大きいですよね。

朝長:大会公式サイトに過去の気象状況が載っています。たとえば、山中湖は標高約1000mですが、2016年から2020年の朝6時で一番寒い時に-0.3℃、一番暖かくて13.8℃と全然違うんですよね。だから当日の天候次第で持って行く装備は全く変わってきます。

岡田:寒い時はかなり冷え込みますね。

朝長:去年は非常に暖かくて、二十曲峠(標高1134m)でランナーがTシャツ・短パンで寝っ転がっている感じでしたが、それぐらい暖かかったんで良かったんですよね。

岡田:一方で、私たちが走った2019年は雪が降りましたよね。

朝長:そういうこともあると考えておかないといけないんですよね。準備をしたうえで当日の天候や気温を見極めた上で装備を選びことが必要になります。

岡田:備えは大事ということが分かりました。そのなかでポイントになってくるのはまず防寒具ですね。

朝長:そうですね。まずはレインウェア上下になります。体の濡れを守りますし、風も防いでくれるのでトレランのレースでは必携品にもなっています。

岡田:さらに寒い時を想定した場合の防寒ウェアも必要だと思いますが、どんなアイテムがおすすめですか。

朝長:フリースも良いですね。厚さもいろいろとあるので気温で対応すると良いと思います。

岡田:自身が暑がりか寒がりかでも変わってきそうですね。

朝長:その辺も状況を見て選んで欲しいと思います。

岡田:場合によっては化繊の中綿のようなものもチョイスするかもしれませんね。下半身はどうでしょうか。

朝長:下半身も防寒対策は必要でタイツかロングパンツを用意しておくと良いと思います。タイツは最初から履いていても良いし、携帯しても良いと思います。

岡田:普段は短パンで走っているなんて人も寒いコンディションの時にタイツがあると良いですね。

朝長:やはり基本は天候次第で、短パンでロングパンツを持って行くのか、すごく暖かそうだったら防寒はレインパンツにして短パンとタイツしようかとか、最初から寒かったらタイツやロングパンツを履くとか、いろいろ考え方はあると思います。

岡田:いろいろ組み合わせがありそうですが、どれくらい想定しておくと良いですか。

朝長:3パターンはしておいた方が良いと思います。去年のように暖かい時と、2019年のように寒い時、そしてその中間の3つは考えておいた方がよいですね。そのイメージをしておくと、前日とかにバタつかなくて済むと思います。

夜間パートを安全に行動する

岡田:続いての重要なアイテムはライトです。こちらもどれを持って行った方が良いかと悩まれる方が多そうですね。

朝長:必携品はライト2個とそれぞれの予備バッテリー。2個なのでヘッドライト+ハンドライトもしくはウエストライトような組み合わせが基本になると思います。ライトを2個使った方が安全に走れると思います。

岡田:スタートが午後ですから割と早めに夜パートに入りますよね。

朝長:長い人だと2回夜を過ごすランナーもいます。一晩しっかり使えるくらい明るさやバッテリーに不安がないものを選ぶと良いと思います。

岡田:ストレスが全然違いますよね。僕も前回100マイル走った時、45時間走っているんで、ライトのバッテリーが1本ちゃんとなくなるんですよね。だから予備バッテリーは必要ですよね。その瞬間動けなくなってしまいますから。

補給量とタイミングをプランニングする

岡田:次は補給に関してです。意識することはやはりたくさん持って行くということだと思うんですけど、気をつけるポイントはありますか。

朝長:ざっくりで決めてしまうと実際は何キロカロリー必要で、どれくらい食べたか分からなくなってしまうので、目標タイムに対してどれくらい必要なのかという計算と、それをどうやって摂るのかを考えておいた方が良いですね。

岡田:補給にもプランニングが必要そうですね。

朝長:なんとなくいっぱい持って行って、元気がなくなってきたから食べようではなく、ある程度定期的にジェルを摂るとか、何かを食べるようにしないと気付いたらエネルギーが切れてハンガーノックになってしまいます。なかには「私は全然食べなくても大丈夫」なんて言う人もいるんですけど、大丈夫だと思っているだけで食べたらもっとパフォーマンスを維持できるかもしれないので、その辺もしっかり考えて欲しいと思います。

岡田:実際にどれくらい持って行くんでしょうか。

朝長:これは個人差があるので正解はないんですけど、僕が参考にしている計算式があって【(体重×行動時間×運動強度-1500)×0.6~0.7】というのがあります。ちょっとややこしいんですけど、これをやるとおおよそ必要カロリーが出てきます。

岡田:個人差はありつつも、ある程度の目安となりそうですね。

朝長:これから見ると、ゆっくり走る人でも1時間に150kcalくらいとったほうが良いというのが目安に出てきますので、参考にしてもらえればと思います。

岡田:ここまでいろいろな攻略ポイントを紹介していただきましたが、最後に朝長さんから出場する選手へ気合のメッセージをお願いします。

朝長:去年も言いましたが、一番大事なのはメンタルです。頑張っていきましょう。

岡田:完走するためには自分自身のメンタルですね。ありがとうございました。

長丁場のレースだからこそ、事前の計画とレース中のマネジメントは欠かせません。100マイルレースに万全で挑むためにも、ぜひ朝長さんのアドバイスを参考にしてみてください。

■UTMF2023大会公式サイトはこちら

朝長 拓也さん

トレイルランニング専門店 Trippers 代表/ JAFTスポーツシューフィッター
2012年にトレイルランニングに目覚め、2017年にTrippersを立ち上げる。
※前職はアパレル企業で服の型紙を作るパタンナー
2018年トレニックワールド彩の国100mile 完走
2020年 KOUMI100 完走

記事を書いた人  Runtrip編集部

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