2023.03.14
高脂肪の食事が過食を誘発!肥満が進行するメカニズムとは?【kencom監修医・最新研究レビュー】
揚げ物などの脂っこい食事は、身体に悪いとわかっていても我慢することは難しいもの。実はこの高脂肪食を過食してしまう現象には、脳の機能が関係しているそうです。
今回ご紹介するのは、the Journal of Physiology誌に2022年掲載された、過食のメカニズムについての論文です。
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高脂肪の食事が食べすぎを誘発するメカニズムとは?
脂肪の多い食事を摂ると、その後に過食が生じやすくなることが知られています。
主に動物実験による知見ですが、脂肪の多い食事を摂ることにより、一度の摂取でもその後24から48時間は、食欲は増進して過食が誘発されます。概ね3から5日以内には、その影響は調整されて消失し、それ以前の通常のカロリーで、満腹感が得られるようになります。
しかし、脂肪の多い食事を、欲望のままに摂り続けていると、摂取カロリーの調整メカニズムは破綻して、過食は持続して体重は増加するのです。
これが高脂肪食により肥満が進行するメカニズムの1つです。
摂食中枢は脳の視床下部に存在していますが、この高脂肪食による過食の誘発は、むしろ脳幹の延髄にある迷走神経背側運動核により、その調節がなされていると想定されています。
過食を調整しているのは「脳幹」
今回の研究では主にネズミの実験により、この高脂肪食による過食を抑制する働きが、迷走神経背側運動核周辺の、星状細胞(アストロサイト)によって調整されていて、その星状細胞の機能を阻害することにより、脳幹と胃との副交感神経を介した連携が崩れ、過食が誘発されることが確認されました。
この現象が人間でも同じように認められるものなのかどうかは、現時点では実証されていませんが、高脂肪食による過食と肥満誘発のメカニズムが、視床下部ではなく脳幹レベルでも調節されている、という今回の知見は非常に興味深く、今後の新たな研究成果にも期待したいと思います。
記事情報
参考文献
著者/監修医プロフィール
■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36