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2020.06.11

新型コロナウイルス、小さい子どもが感染しにくいのは何故?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本では17,000人以上が感染した新型コロナウイルス。しかし、その中でも小さな子供が感染し、重症化したという話はあまり聞きません。
子供は感染しにくいのでしょうか?もしくは感染しても軽症で終わるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2020年5月20日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の年齢分布の謎を、鼻粘膜のACE2遺伝子発現量で説明した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナウイルスは小児の感染事例が少ない

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新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染症は、小児の感染事例が少ないことが特徴で、流行の当初は小児の感染事例はないとされていました。
その後感染が全世界に拡大するに至って、乳幼児を含む小児の感染事例も報告されるようになりましたが、それでも小児の事例は2%未満(上記文献の記載)という少なさです。

この現象には幾つかの異なった説明があります。

代表的なものは、小児はこのウイルスに感染しづらいというものと、感染はするけれども軽症に終わる、という2つの説明です。

そのどちらが正しいのかについては、現状正確には分かっていません。

新型コロナウイルスはSARSと同じように、細胞にあるACE2受容体に結合して、それを足掛かりに細胞内に侵入して感染します。

これも当初は下気道のACE2にのみ感染して、肺炎を起こす、というように考えられていましたが、今では鼻粘膜などの上気道にもACE2が発現していて、そこにも感染することが分かっています。

年齢によってACE2の発現に差がある?

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今回の研究では、このACE2の発現に年齢による差があるのでは、という推測のもとに、多数例で鼻粘膜のACE2遺伝子の発現を調べ、その年齢による違いを比較検証しています。

喘息の関連因子を検証するために採取された、4歳から60歳の305名の鼻粘膜の検体を、10歳未満、10から17歳、18から24歳、25歳以上、という4群に分けて、ACE2遺伝子の発現量を比較したところ、10歳未満の年齢では、それ以外の年齢区分と比較して、有意にACE2遺伝子の発現量が低下していました。
それを図示したものがこちらです。

18歳くらいまでは年齢とともに増加することが分かります。この違いは喘息の有無や性差に影響はされませんでした。

つまり、小児では上気道のACE2が少なく、そのために新型コロナウイルス感染症に罹り難いのでは、ということが推測されます。

ただ、気管支肺胞洗浄液によるACE2活性を調べた以前の報告では、年齢による差は見られなかったという結果が発表されています。

年齢と感染しやすさの関係が、もっと解明されることに期待

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上気道と下気道で発現が異なっているという可能性はありますが、それは証明されたものではなく、今回の研究結果は非常に興味深いものですが、今後別のデータや研究により、補強される必要はありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36