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2020.08.19

新型コロナは完治しても何らかの体調不良が続くのか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルス感染後、完治してもダルさがぬけないといった症状に悩まされる報告をニュースで耳にします。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に2020年7月9日にウェブ掲載されたレターですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染回復後の後遺症についての報告です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナは完治しても体調不良が続く?

日本でも報道などでは、新型コロナウイルス感染症から回復後に、全身倦怠感や微熱などの体調不良が持続しているというような話が聞かれます。

実際にクリニックで経験した患者さんでも、回復後に体調不良が続いているというような話は聞くことがあります。

ただ、感染症の後の持続する体調不良というのは、新型コロナウイルスに限ったものではありません。「免疫のバランスが崩れている」というような説明がされることもあり、病原体の抗原に対するアレルギー反応が、持続するというような説明がされることもあります。

ただ、その裏付けとなるような明確な根拠が存在しているかどうかは甚だ疑問で、感染のストレス後のうつ状態で説明されることもあります。

新型コロナウイルス感染症回復後の体調不良が、この病気の特徴的な所見であるのか、それとも他の感染症後の体調不良と変わることのない現象に過ぎないのかについては、まだ明確なことが分かっていないのです。

経過観察した患者の8割が不調に悩まされていた

今回の研究はイタリアの単独施設のもので、発熱などの症状が改善し2回のPCR検査で陰性で退院した179名の患者を登録してその後の経過を観察し、そのうちの14名は経過フォローを拒否し、22名はその後にPCR検査が再度陽性となったため除外して、結果として143名の解析を行なっています。

その結果平均で60.3日の経過観察において、体調不良の症状が全くなかったのは全体の12.6%に当たる18名のみで、残りの87.4%の患者さんは、その後も体調不良の症状が持続していました。

最も多かったのは全身倦怠感で53.1%、呼吸困難が43.4%、関節痛が27.3%、胸部痛が21.7%と続いていました。

44.1%の患者さんはこうした症状により、生活の質が低下していました。発熱などの急性症状を呈したケースは認められませんでした。

急がれる原因解明

このように、検査が陰性化して臨床的には治癒とされた患者において、8割を超える比率でだるさなどの症状が平均で2か月以上持続していました。

これが新型コロナウイルス感染症の何らかの特徴によるものなのか、それとも他の感染症後の体調不良と同じ性質のものなのか、ストレスに起因する心因反応のようなものなのか、と言った点はまだ不明です。

多くの回復後の患者さんがこうした症状に苦しんでいること自体はおそらくは事実で、今後この現象をより詳細に解析し、より大規模な検証を行なって、その原因に迫る必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36