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2022.08.05

新型コロナが長距離でも感染する条件は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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十分に距離をとれば感染しないと言われている新型コロナですが、2メートル以上距離をとっていたにもかかわらず感染したというケースもあるようです。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2022年6月29日ウェブ掲載された、通常は飛沫感染はしないと想定される距離で、新型コロナの感染が起こる条件についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

2メートル距離をとれば感染しないのか?

新型コロナウイルスの感染は、その主体は飛沫感染と想定されています。

物を介した接触感染が、原因として強調されたこともありましたが、おそらくかなり限定的にしか起こらないようです。飛沫感染というのは、咳や大声などによって、ウイルスを含む飛沫が飛んで感染を起こすのですから、相手と距離を取ることにより、互いにマスクをしていなくても、そのリスクを減らすことは出来ます。

それでソーシャルディスタンシングとして、2メートルを超える距離を取ることが、感染予防として推奨されています。

しかし、頻度は低いものの、2メートルを超える距離は保たれていたのに、感染が成立したというケースも、複数報告されています。

それについては飛沫感染ではあるのだけれど、想定以上に飛沫が距離を飛んで感染が成立した可能性と、飛沫核感染と言って、より水分の少ない微粒子が空気中を漂って、それが吸引されて感染が成立した可能性が想定されます。

飛沫核感染が、新型コロナウイルスの感染形態の中でどの程度の比率を占めているのかは、まだ不明の点が多いのですが、現状オミクロンの変異株の感染は、これまでより感染力が非常に高いことは間違いなく、それは長距離でもより感染がしやすいことを示しているので、2メートルの距離を取っても感染する現象が、どのような場合に生じやすいのかを知っておくことは、その予防のために重要なことであるのは自明だと思います。

長距離感染が起きる条件を検証

今回の研究では、これまでの臨床データを俯瞰するシステマティックレビューの手法によって、長距離の感染が起こる条件を検証しています。

これまでの集団感染を検証した22の報告を解析したところ、職場やレストラン、公共交通機関などにおいて、2メートルを超える距離を保っていても感染した事例は、換気の悪い場合、その場所の気流が1方向に流れていた場合、大声や合唱などエアロゾルの発生しやすいような行為が行われたいた場合に、生じる可能性が高いことが確認されました。

ただ、データの質はそれほど高いものではなく、結果の信頼性も低いものに留まっていました。

距離をとっても場合により感染するので要注意

従って、この問題はまだ解決にはほど遠いのですが、飛沫感染を防ぐ意味で2メートルという距離は、通常の環境では感染リスクを低減するものの、換気の悪い室内や風によって飛沫が1方向に飛びやすい環境、大声で話したり、歌ったりする状況では、感染を防ぐには充分ではないという条件の問題は、充分に理解しておく必要があると思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36