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2022.08.17

ジューシーなお揚げに栄養をギュッと詰めて。鳥取県「いただき」【ニッポン地元メシ#27】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

中国地方の山陰に位置する鳥取県。

日本海に面しており、冬は「松葉ガニ」と呼ばれるズワイガニが獲れることで有名です。
もちろん冬だけでなく、1年を通してイワシ、イカ、アゴ(トビウオ)、アジ、サバ、ハタハタ、そして東部の岩美町では「モサエビ」と呼ばれるクロザコエビが特産です。

山の幸として有名なのが「二十世紀梨」に代表される日本梨。またお米も栽培されています。

そして鳥取県ならではの地形、砂丘のあるエリアでは砂地の特性を活かしたらっきょうや長芋が栽培されています。

多くの有名なブランド食材があることからも、質の良い食材を産出する土地柄がうかがえますが、今回は家庭料理として親しまれる郷土料理「いただき」について紹介します。

「いただき」とは

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html)

「いただき」は鳥取県西部・弓ヶ浜(ゆみがはま)半島を中心に親しまれる郷土料理です。

見た目は五目稲荷のようですが、作り方は全く異なります。
三角お揚げの中身は、人参やごぼう椎茸などの野菜と生米を詰めたもの。これをたっぷりの出汁で炊き上げた料理です。

由来は「頂く(いただく)」「頂(いただき)」など諸説あり

「いただき」の由来には諸説あります。

一つが明治中期頃に福井県のお寺と行き来していた住職が、精進料理として提供された油揚げを気に入り、そこにお米や野菜を詰めたというもの。
そのほかにも当時はお米がとても貴重な食材であったこともあり、ご近所さんから「もらう」ではなく「頂戴する」という意味の「いただき」という説も。
そして鳥取県にある有名な「大山(だいせん)」という山の頂上に形が似ているという意味の「いただき」。といったように、様々な説があります。

どの由来も食べ物や地元を大切に思うところから始まったのですね。
いただきは行事があるときに作られ、現在では家庭料理・おふくろの味として多くの方に親しまれています。

「いただき」の作り方

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html)

いただきの作り方はとても簡単!

通常スーパーなどで見かける油揚げは四角ですが、いただきでは三角お揚げと呼ばれる三角形の形をした油揚げを使うのが定番です。

油揚げは1片に切り込みを入れ手で優しく開いて袋状にします。
その中に生米、にんじん、水で戻した干し椎茸、ごぼうのささがきなどの野菜を一緒に入れ、爪楊枝で口を閉じます。

そして煮干しや昆布、椎茸の戻し汁を使った出汁と、醤油や砂糖、酒といったシンプルな調味料で炊き上げます。

昔は鍋で炊いていたと思われますが、現在では炊飯器でも作れるお手軽料理となりました。
ポイントは具材を詰めた油揚げの表面を菜箸等で刺し、10か所ほど穴をあけることです。
こうすることで、より味が染みやすくなるのです。

稲荷ずしの場合はお米と油揚げを別々に炊いて詰めますが、いただきは一緒に炊き上げるのが大きな違いです。
油揚げはそれ自体にうま味がありますし、根菜や出汁をたっぷりと使うのでうま味がお米の中にぎゅっと詰まった一品になるのです。

昭和30~40年代にかけての境港市では、赤貝を入れて、その煮汁で炊くこともあったそう。現在では鶏肉を入れて炊くなど、家庭によって具材はさまざまなようです。

「いただき」は米、大豆、野菜すべてを網羅!

まずはいただきに使われている油揚げ。原材料は大豆ですのでタンパク質が摂れます。
ここに鶏肉や赤貝を加える場合は、さらに動物性タンパク質をしっかりと補給できますね。

そしてメインのお米は効率の良いエネルギー源となります。

お米と一緒に油揚げに詰める野菜、特にごぼうや椎茸には食物繊維が多く含まれますし、にんじんには抗酸化作用を持つβ-カロテンが多く含まれます。

そしてベースとなるだし汁。
煮干しや昆布、椎茸の戻し汁を使うことで、食材から溶け出たミネラルを摂ることができます。
ミネラルにはカリウムやナトリウムなどを含め様々な種類がありますが、どれも身体の機能を整える大切な役割があり、元気でいるためには欠かせない栄養素です。

このように、主食に様々な食材を加えることで単品料理でも栄養をしっかりと摂れるのです。
前日の夜に炊いて翌日の朝ごはんにしたり、成長期の子どもたちやスポーツを頑張る方への間食としてもオススメです。

お取り寄せも可能!ご当地の味を食べてみて

食材を余すことなく使った、うま味たっぷりの「いただき」。

お取り寄せもできるようなので、気になった方はご当地の味を食べてみてはいかがでしょうか。

参考:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/itadaki_tottori.html)
参考:いただき 食のみやこ鳥取県(https://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=178227)

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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