2020.06.20
そのおかず、本当に安全?夏場は特に注意すべき、手作り弁当で食中毒にならない工夫
学校や通勤が再開したことで、お弁当作りを再開したご家庭も多いのではないでしょうか。
手作り弁当は家族の好みや食事量、生活習慣に合わせて詰めることができるだけでなく、外食よりもお財布に優しい点でも嬉しいですよね。
しかし、そのお弁当で食中毒を起こしてしまってはせっかくの嬉しい気持ちも台無しに…。
今回は大切な手作り弁当を食中毒から守り、安全に美味しく食べるためのポイントをお伝えします!
夏のお弁当は「細菌性食中毒」に気を付けて
食中毒の原因となるものには菌やウイルス、寄生虫などいくつかありますが、特に夏場は細菌が原因となる事が多くなります。
細菌性食中毒が増える原因は、食中毒の原因となる菌が増殖しやすい3条件「栄養」「温度」「水分」が揃いやすくなるためです。
食中毒の原因となる細菌が付着しているのは、食材だけではありません。作る人や食べる人の手指、調理中のキッチングッズにも細菌は存在するため、食べ物に触れるすべてのものに注意が必要です。
お弁当作りで気を付けるべきポイント
細菌性食中毒からお弁当と食べる人を守るために、お弁当作りの際は農林水産省も提唱する食中毒予防の3大原則をお弁当作りに置き換えてチェックをしましょう!
その1:食中毒の原因となる細菌をつけない
調理の際はこまめに手を洗う
調理前に手を洗うのは常識ですが、途中でお手洗いに行った時や髪の毛を触った時も必ず手を洗いましょう。
また、爪の隙間や指輪・時計などの接触部分には菌がたまりやすいため、爪を洗う専用のブラシを使うほか、指輪・時計を外して手洗いをし調理をすることもおすすめです。
手指に傷がある場合はきちんと手当てをし、直接食品に触れないようにする
人の傷口(特に化膿している部分)には、通常よりも多くの黄色ブドウ球菌が繁殖しているので要注意です。食品を素手で触らないように衛生手袋を付けたりトングや菜箸を使うなどしましょう。
また、下痢気味などで体調がすぐれない時は感染症による食中毒に罹患しているリスクがあるため、思い切って調理をしないというのも予防になります。
まな板や包丁は食材ごとに分け、菜箸は調理用と盛り付け用で分ける
特に肉や魚などタンパク質が多く含まれる食材には菌が繁殖しやすいため、まな板は食材ごとに肉魚用と野菜用など分けましょう。
包丁も生肉を切った後にそのまま生野菜を切るということがないよう、こまめに洗うか、まな板ごとに包丁を使い分けると良いでしょう。
また、生肉や生魚など調理前のものを触った菜箸(トングやお箸)にはまだ菌が残っている可能性があります。できれば調理用と盛り付け用で別々のものを使うか、もしくはきれいに洗ってから盛り付けに使いましょう。
お弁当箱はきれいに洗い、調理前の食材の近くに置かない
水分が多いと菌が増えやすいため、使うお弁当箱は事前にきれいに洗ってしっかり乾燥させた状態で使用しましょう。
また、調理前の食材の近くにお弁当箱や調理済みの食材を置かないようにしましょう。
その2:細菌を増やさない
新鮮な食材を購入・使用する
菌の栄養となるタンパク質の多い食材や水分が多いものなどは、時間が経つと菌が増殖する機会が増えることが考えられます。なるべく鮮度の良いものを新鮮なうちに使い切るようにしましょう。
生鮮食材はしっかりと温度管理された場所で保管する
温度が高い場所などで長時間放置されたものは食材の温度が上がります。
菌は、種類にもよりますが20~50℃と幅広い温度で生きることができ、食中毒を引き起こす可能性のある菌は37℃前後で最も活発に増殖するため、特に夏場の保存には注意が必要です。
日本ではあまり見かけませんが、温度管理がされていない不衛生な場所で販売されている生鮮食品にも注意しましょう。
汁気の多いおかずは汁気を切る
作ってすぐに食卓で食べる際は煮汁があっても問題ないのですが、お弁当には「持ち運び、数時間放置する」という時間のリスクが伴います。水分が多い状態は菌の増殖しやすい条件の一つになるので、お弁当の際は煮汁の水気を切りましょう。
どうしても…という場合は、硬めにとろみをつける、照り焼きのようにしっかりと煮汁を絡ませるなどの方法で煮汁が流れにくい工夫があるとよいでしょう。
しっかり冷ます
お弁当箱にごはんやおかずを詰めるときはしっかりと冷ましてから詰めましょう。
ポイントは「個々に冷やす」ということです。せっかく冷ましたおかずの隣に温かいおかずが来ると、また温度が上がってしまいます。
また、冷ます際は粗熱が取れたらふんわりとラップをかけておきましょう。空気中の菌やほこりが落ちて入るのを防ぎます。ぴったりとラップをすると温かい空気の逃げ道がなくなりますので、「ふんわり」でOKです。
その3:細菌をやっつける
食材をしっかり加熱する
「しっかり」の目安は、食材の中心部分が75℃の状態で1分以上の加熱を指します。半熟卵が好きな方も多いですが、加熱が不十分のため食中毒予防の観点からお弁当にはおすすめできません。
非加熱で水分も多いという点から、特に夏場の生野菜も避けたいところ。彩りにミニトマトを使用する際はヘタの部分に注意をしましょう。ヘタがついている部分はくぼみがあり、菌が増殖しやすいポイントとなっています。お弁当に入れる場合はヘタを取りきれいに洗って水気をふき取り、水気が出ないようカットせずに入れましょう。
細菌性食中毒を防ぐ工夫
その他にも、お弁当作りで使えるおすすめの工夫やアイテムがあります。
・夏場はシリコンカップを使い捨てのものに変える
・抗菌作用があるといわれる梅干しや大葉、カレー粉などのスパイスを使ったメニューを入れる
※できれば昔ながらの塩分濃度の高い梅干しを使用しましょう。調味漬けの梅干し(しそ梅、はちみつ梅、昆布梅など)は塩分濃度などが低く、殺菌・抗菌効果が十分に得られないことがあります
※梅肉をご飯にまぜ合わせた梅ご飯、肉や魚、野菜のカレー炒めなど
・お弁当用の防菌シートを活用する
・汁気の元となる醤油やソースなどの調味料を別添えにする
作る人も、食べる人も気を付けて
食中毒は作る人だけの責任のように感じますが、食べる人も配慮が必要です。
お弁当を持ち歩く際は保冷バックに保冷剤を一緒に入れ、保管するときは冷蔵庫もしくは冷暗所で保管をしましょう。
また、お弁当を食べる前には必ず手洗いを心がけましょう。お弁当を持たせるときにお手拭きや除菌シートを入れておくと安心です。
食中毒の原因となる細菌が増殖しやすい夏場でも、少し気を付けるだけで食中毒の予防は可能です。作る人、食べる人がお互いに協力して、おいしくて安全な手作り弁当生活を送りたいですね。
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磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。