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2018.10.11

おっぱいのしこりの謎【目からウロコ!?乳がんの話#2】

KenCoM公式:ライター・緒方りえ

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近年、乳がんの患者数は増加傾向にあり、年齢別に見た女性の乳がん数は40代後半と60代前半でピークを迎えると言われています。
乳がん特集2回目は、知っているようで知らなかった『おっぱいのしこり』についてご説明しましょう。
今回も、乳がん治療のスペシャリストである昭和大学病院乳腺外科准教授 明石定子(あかし さだこ)先生にお話を伺いました。

乳がんと言えば『しこり』

皆さんも、乳がんと聞いてまず思い浮かべるのはしこりの存在ではないでしょうか。内臓や脳などの身体の奥にあるがんは触れることができませんが、乳がんは自分で触れて確かめられることもあります。

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よく保険の窓口などに置いてある模型の触り心地は、ビー玉やビービー弾のような硬い粒がコロコロと動くタイプ。しかしこれは、どちらかと言うと良性の触り心地に近いです。とはいえ、自分の乳房をチェックする導入編として活用してみるのはアリだと思います。

基本的に、がんは周りの組織を浸していくことが多く、がん化した部分と周りの正常な組織との境目がツルッとわかることはほとんどありません。

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まず大前提として、乳がんは乳管と小葉の上皮にある細胞で発生するものです。
乳がんのできやすい部位は、外上(乳房を縦横4分割し、外側の上部)と一般的に言われたりもしますが、実際にはどの部位にも発生しうると言えます。
外上が好発部位と言われている所以は、単純に面積が広いからだと考えています。また、乳腺組織から発生するということは、稀に副乳から発生することもあります。

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つまむと正常な乳腺組織を挟んでしまうので、気づきにくいでしょう。しこりを発見するためには、4本の指の腹で圧をかけてスライドさせるように触りましょう。まんべんなく色んな方向に、が大切です。
また、生理後は乳房の張りが落ち着くためゴツゴツしていなくて触りやすい時。閉経前の人は生理開始10日目くらいにチェックするようにすると良いでしょう。
1ヵ月に1回くらいの頻度でお風呂の時などにチェックしてみてください。

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がんが大きくなるスピードは(様々な要因が影響するので一概には言えませんが)一般論ではだいたい1年で1cmくらいです。
しこりが乳腺組織や脂肪の奥にある場合は、大きくならないと自分で触ってもなかなか分からないことがあります。逆に、皮膚に近い場所の時にはほんの小さなしこりを見つけられることもあります。
もちろん、医師が触ったとしても100%発見できるわけではありません。
乳房のセルフチェックも大切ですが、定期的に健診などで検査しておくことも必要ですね。

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例えば閉経前の人は、生理前に乳房内の嚢胞(のうほう。水を溜める小さな袋)が触れやすくなるので、乳がんかもしれないと心配する人もいます。しかし慌てず、生理が終わってからもう一度確認をしてみてください。もし小さくなったり分からなくなっていれば基本的には問題ないです。
若い人は色々な良性のしこりがあることも多く、心配であったり自分で判断できない場合は受診して医師に確認してもらいましょう。
もし高齢になってから今までになかったしこりが見つかった場合は、乳がんの可能性が高いので受診をおすすめします。

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乳がんは、治りやすいがんトップ3に入ります。
乳がん全体でみると10年生存率が8割くらいです。早期発見の定義にもよりますが、例えば2cm以下でリンパ節への転移がない場合は9割ほど治ります。ただし20年、30年経って再発する可能性はゼロではありませんので完治するとは言い切れません。

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正しく、しこりチェックを!

しこりの触り心地、触り方などを理解することができたでしょうか。
心配な時は病院を受診することはもちろん、自分の身体を正しい方法でチェックすることが大切です。身近な人に教えてあげるのも良いかもしれませんね。
次回は『乳がん検査と発症リスク』について、わかりやすく説明します。

■乳がんの記事はこちらから!

明石定子(あかし・さだこ)先生

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1965年生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三外科に入局。1992年より国立がん研究センター中央病院外科勤務。同乳腺外科がん専門修練医、医員を務めたのち、2010年に乳腺科・腫瘍内科外来病棟院長。2011年より昭和大学病院乳腺外科 准教授に就任。日本外科学会指導医・専門医、日本乳癌学会乳腺専門医・指導医・評議員、検診マンモグラフィ読影認定医師。

著者プロフィール

■緒方りえ(おがた・りえ)
1984年群馬県生まれ。20代から看護師として活動をする傍ら、学会への論文寄稿や記事の作成なども行う。2015年独立しフリーの編集者として活動。2017年より合同会社ワリトを設立し代表社員に就任。医療系を中心に、旅行、雑貨など幅広いジャンルでフリーライター、フリー編集者として活動中。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/緒方りえ)

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