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2021.12.29

40代以降の不正出血は放置しないで!急増する子宮体がんの基礎知識を知る【子宮体がん・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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女性なら気になる「子宮のがん」。定期的に子宮がん検診を受けていても、見つかりにくいのが子宮体がん(子宮内膜がん)です。

では、早期発見するためにはどうしたら良いのでしょうか?
40代以降から急増する「子宮体がん」の絶対に知っておきたい知識を、相模野病院婦人科腫瘍センター顧問の上坊敏子先生に聞きました。

上坊 敏子(じょうぼう・としこ)先生

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独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)
相模野病院婦人科腫瘍センター顧問

【プロフィール】1973年名古屋大学医学部卒業。北里大学病院で研修後、同医学部講師、助教授を経て、平成19年に教授に。同4月から社会保険(現独立行政法人地域医療機能推進機構)相模野病院婦人科腫瘍センター長、令和元年4月から現職。専門は婦人科腫瘍学。日本産科婦人科学会専門医、細胞診専門医、国際細胞学会会員、日本婦人科腫瘍学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。著書に「女医さんシリーズ 子宮がん」(主婦の友社)「知っておきたい子宮の病気」(新星出版社)「卵巣の病気」(講談社)など。

子宮体がんとは?

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子宮のがんには、「子宮頸(けい)がん」と「子宮体がん」の2つがあります。名称が似ているため混同されがちですが、全く別の病気です。発生する場所が違うだけでなく、罹患する年齢層も、原因も、症状も全く違います。子宮は奥行き7センチぐらいの臓器ですが、子宮頸がんは子宮の入り口付近に、子宮体がんは子宮の奥の方の、赤ちゃんが育つ場所である子宮体部に発生するがんです。

また、子宮頸がんとの大きな違いは、早期から症状があるところ。子宮頸がんは無症状で進行するため、気がついた時には進行がんになっているケースが多いのに対し、子宮体がんは比較的ゆっくり進行し、初期の段階から症状があるため気がつきやすい特徴があります。しかも、子宮体がんの多くは、早期発見すれば治療も手術だけで済むことが多く、早期なら95%近くが治るがんです。それだけに、子宮体がんの知識をつけることで、早期発見につなげていただきたいと思います。

急増する子宮体がん

子宮体がんは、比較的若い人に発生する事は少なく、閉経前後の40歳代後半から増加し、50〜60歳代にピークを迎えます。子宮体がんは、40年ほど前までは子宮にできるがん全体のわずか数%と日本人女性には珍しいがんでしたが、徐々に増加し続け、現在では、罹患数が婦人科のがんの中で最も多くなっています。

この背景には、結婚・妊娠年齢の上昇や、妊娠回数の減少、月経不順、生活の欧米化、日本女性の高齢化などがあるとみられています。

がんの発生の原因は?

子宮体がんの発生には、女性ホルモンが深く関わっています。女性ホルモンには、子宮内膜の増殖を促す「エストロゲン」と、排卵後に分泌されて子宮内膜の増殖を抑える「プロゲステロン」がありますが、この2つのホルモンバランスが何らかの原因で崩れる事でがんが発生すると考えられています。

通常、受精卵の着床に備えて増殖した子宮内膜は、妊娠が成立しなければ剥がれ落ちて、4週間ごとにリニューアルされます。しかし、何らかの原因でエストロゲンが長期的に、過剰に生産されると、内膜が異常に増殖し、その一部が子宮体がんになると考えられています。

子宮体がんの主な症状

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子宮体がんの、代表的な自覚症状は「不正出血」です。多くの場合、がんが初期の頃から現れるため、がんを見つける上で絶対に見逃してはいけない症状です。「月経ではないのに出血」があったり、「閉経したのに出血がある」場合や、「おりものに悪臭がある」「おりものが茶色っぽい」などのおりものに血が混ざるなどの変化にも注意してください。

がんが進行してくると、子宮が大きく膨れ上がってしまうため、不快な下腹部の痛みや、排尿痛、腰痛、腹部膨満感などの症状も現れてきます。

子宮体がんのリスクが高い人は?

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子宮体がんは子宮内膜に出来るがんなので、毎月きちんと月経があれば、仮にがん細胞が出来たとしても、月経の時に子宮内膜と一緒に排出されるため、子宮体がんになるリスクは非常に低いものです。45歳以上の方にリスクが高いのは、更年期に差し掛かりホルモンのバランスが崩れるため、月経があるように見えても「排卵が不十分で、プロゲステロンが十分に分泌されないために内膜細胞の異常な増殖」がおこりやすくなるからです。若くても、月経が不規則な人、多嚢胞性卵巣症候群や排卵障害がある人は周期的に月経を起こす治療を受けることが大切です。

また、肥満や糖尿病の人もリスクが高いことが知られています。これは、脂肪の細胞からもエストロゲンが分泌されるため、腫瘍の成長促進の原因に結びつくとためと考えられています。他にも、卵巣がんや乳がんを発症した方や、遺伝性のリスクもあるので、当てはまる方は定期的なチェックを怠らないように注意しましょう。いずれにしても45歳以上の方は、特にリスクが高いことを認識していただき、不正出血などの症状を見逃さないようにしてください。

子宮体がんは、「子宮がん検診」では見つからない

子宮体がんが見つかった患者さんの中には、「子宮がん検診を毎回受けていたのに……」という方がいますが、自治体や人間ドッグの婦人科検診では、【子宮頸がん検診のみ】であることが多いです。子宮体がんの検診は、不正出血がある場合やおりものに異常があったり、月経が不規則だったりと、なんらかの不調をきたしている場合には検査が推奨されていますが、通常の検診では行われていないことが多いです。

自分が受けている検査が「何を調べる検査なのか?」という事は、必ず知っておくようにしましょう。

早期発見できれば95%以上は完治!

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子宮体がんは、がんの広がり方からⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分類されます。子宮体がんは比較的進行が緩やかで、初期から症状が出るのでⅠ期が最も多く、予後の良好ながんです。早期発見すれば、治療も手術だけで済むことが多く、95%近くが治るがんです。それだけに、早期発見が何より大切なので、不正出血などの症状があれば、すぐに婦人科を受診してほしいと思います。

子宮体がんの早期発見のコツと、予防最新情報は後編で!

では、早期発見するためには、日頃からどんなことに気をつければ良いのでしょうか?
後編では、絶対に知っておきたい早期発見のコツや、子宮体がんの治療や予防方法についての、最新情報を詳しくお伝えします。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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