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2022.06.23

夜食べないダイエット。実際の効果はどの程度?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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世の中にはさまざまなダイエット法がありますが、科学的に効果が認められたダイエット法は数少ないのだそう。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年4月21日掲載された、食事時間を制限するダイエットの有効性についての論文です。

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科学的に有効なダイエット方法とは?

肥満は心血管疾患など多くの病気のリスクとなり、体重を適切に減らすことにより、そのリスクの低減に繋がることも分かっています。

そのため、多くの減量法が開発されていますが、科学的にその効果が立証されているものは実際にはあまり多くはありません。

摂取カロリーを制限する低カロリーのダイエットは、その数少ない長期の有効性の確認されている減量法ですが、その1年継続後の有効性は、臨床試験においては体重の5%未満の低下にとどまっていて、リバウンドも多いのが実際です。

そこでカロリー制限に組み合わせるダイエット介入として、今回検討されているのが、「食事を摂る時間を制限する」という方法です。「夜食べると太る」というのは一般にも広く言われていることですが、代謝の低下する夜間帯にカロリーを摂取し、それから寝てしまうことは、理屈から考えても体重増加の要因とはなりそうです。

ただ、実際にその影響が、科学的に実証されているとは言えないのです。

ダイエットに夜間の食事制限を加えるとどうなるか

今回の研究は中国において、年齢は18から75歳、BMIが28から45で、内臓疾患などはない139名をくじ引きで2つの群に分けると、男性は1日1500から1800キロカロリー、女性は1日1200から1500キロカロリーの低カロリーダイエットを施行すると共に、一方の群では朝8時から午後4時までに食事の時間を制限し、もう一方は特に食事時間の制限は行わずに、12か月の経過観察を行っています。

その結果、1年の時点での平均の体重減少は、食事時間制限群で-8.0キログラム(95%CI:-9.6から-6.4)であったのに対して、食事時間制限未実施群では-6.3キログラム(95%CI:-7.8から-4.7)で、この差は検査の規定上、有意なものではありませんでした。

つまり、夜は食べないような制限を加えても、低カロリーダイエットの有効性にはあまり差は見られなかった、という結果です。

時間制限の有効性は確認できず

この問題は簡単に結論が出るものではなく、今後も検証が必要と考えられますが、夜食べないダイエットの減量効果に限った有効性は、現状科学的に確認されたものではない、というように捉えておいて良いようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36